ニュージーランドは、この試合で代表を引退するキャプテンのキーラン・リード選手が試合前に行う先住民族の踊り「ハカ」を先導してチームを鼓舞しました。
そして、開始直後からスクラムハーフのアーロン・スミス選手を起点に持ち味のスピード豊かな多彩な攻撃を展開し、フルバックのベン・スミス選手が2つのトライをあげるなど、前半だけで4つのトライを奪うなどして28対10とリードしました。
後半、ウェールズは大会のトライ数でトップに立つウィング、ジョシュ・アダムス選手の7つ目のトライなどで反撃しましたが、ニュージーランドは安定感のある守備で勢いを止め、40対17で勝ちました。
この結果、ニュージーランドは3位、ウェールズは4位で大会を終えました。
ラグビーワールドカップ日本大会は、2日決勝が行われ、4大会ぶり2回目の優勝を目指すイングランドと史上最多に並ぶ3回目の優勝を目指す南アフリカが午後6時から対戦します。
NHKは、試合をBS1などで中継するほか、インターネットの特設サイトでライブ配信する予定です。
王国の面目保ったニュージーランド
ニュージーランドは、多彩なパス回しや堅いディフェンスなど底力を発揮してウェールズに快勝。史上初の3連覇は逃したものの、世界のラグビー界を引っ張ってきた王国としての面目を保ちました。
「オールブラックス」の愛称で親しまれるニュージーランドをめぐっては、大会前、衝撃的なニュースがありました。10年近く守ってきた世界ランキング1位から陥落したのです。
それでも大会に入ると初戦で激突した強豪、南アフリカとの試合では相手の一瞬の隙を突いて瞬く間に2つのトライをあげて勝利するなど1次リーグを危なげなく通過し、準々決勝でも開幕を世界1位で迎えたアイルランドに圧倒的な戦いぶりで快勝しました。
しかし、準決勝でイングランドに強みである攻撃を完全に封じられて敗れ、史上初の3連覇の夢がたたれました。
この敗戦に、ニュージーランドのメディアは「世界の終わりだ」と報じたり、一面を真っ黒に塗りつぶした新聞を販売したりするほどの落胆ぶりでした。
そうしたなかで臨んだウェールズとの3位決定戦で、オールブラックスは母国と日本のファンのために、底力を発揮しました。
バックスとフォワード関係なくオフロードパスなど多彩なパス回しを見せたり、華麗なステップで相手を抜き去ったりしてトライをあげたほか、密集で相手を押し返してボールを奪ってトライにつなげるなど、持ち味の攻撃的なラグビーを全開にしました。
ディフェンスでもゴール前での集中力を高く保ち、簡単にはトライを許さない堅さを見せました。
ニュージーランドは、今大会、ベテランのキャプテン、キーラン・リード選手や俊足の司令塔、ボーデン・バレット選手など「バレット3兄弟」のほか、ウイングの若手選手の活躍などで試合を大いにわかせました。
長年にわたって世界のラグビー界の先頭を走ってきた王国は、ワールドカップで3位に終わったものの、十分な存在感を示して、日本大会を終えました。
そして、リード選手や3位決定戦で最優秀選手に選ばれたブロディー・レタリック選手などは大会後、日本のトップリーグのチームに加わることになっています。世界最高レベルのプレーが、このあとも日本で見られるという楽しみも残してくれました。
ニュージーランドHC「誇りを持って帰れる」
ニュージーランドのスティーブ・ハンセンヘッドコーチは「準決勝で負けて選手たちは傷ついていたので、しっかりした試合ができる環境をつくろうとした。ジャージを誇りに思えるような試合ができた。誇りを持ってニュージーランドに帰れる。ウェールズも非常によいラグビーをしていたので心からたたえたい。こういう試合をすれば多くの人を魅了できると思う」と振り返りました。
そのうえで、今大会でヘッドコーチを退くことについて、「過去に実現してきたことは1人では成し遂げられなかった。チームは家族のようなもので、絆をずっと感じると思うし、見守っていきたい。この仕事に就けたことを誇りにする。ニュージーランドは、より上を目指してよいチームになっていかなければならない」と話しました。
ニュージーランド リード主将「すごく楽しんだ」
ニュージーランドのキャプテン、キーラン・リード選手は「すばらしい1日になった。すごく楽しんだ。準決勝の後は感情的になったが、きょうはそれを乗り越えてよい試合になった。このチームでプレーするのが大好きだった。最終的に特別な瞬間を家族とも共有できたので、長い間記憶に残るだろう」と振り返りました。
そのうえで、大会後に日本のトップリーグのチームに加わることを踏まえて「特別な思い出をつくったすばらしい2か月だった。日本のファンたちが温かいサポートをして迎えてくれた。日本にまた戻ってくることを楽しみしている」と話しました。
最優秀選手はニュージーランドのレタリック
3位決定戦の最優秀選手に選ばれたニュージーランドのロック、ブロディー・レタリック選手は試合のあと、「先週は残念ながら敗れたが、今週は集中力を高めてよい試合になった。自分のパフォーマンスもよかったので誇りに思う。ケガもあり、十分に試合に出られなかったが、最高なワールドカップだった」と振り返りました。
そのうえで、大会後に日本のトップリーグのチームに加わることについて「日本にいるニュージーランド人のコーチなどから日本の話を聞いている。新しいチャレンジなり、新しい友達をつくったり、文化に触れたりすることを非常に楽しみにしている」と話しました。
ウェールズHC「結果に対して不満はない」
ウェールズのウォレン・ガットランドヘッドコーチは「ニュージーランドはアタックが鋭く非常によいプレーをした。前半で点差が開いてしまったのが残念だった。準決勝から5日後の試合で、けがで出場できない選手もいて 厳しかった。結果に対して不満はない」と振り返りました。
また今大会を最後に12年に渡り務めてきたウェールズのヘッドコーチを退くことについて「決勝に進めず残念だった。私の最後の試合だったが、あまり感傷的になることはない。多くのことを結果として出してきた。新しいコーチ陣がまた積み上げていくことになる。選手が今後もできるかぎり成功することを祈っている」と話しました。