原発げんぱつ事故じこから８はち年ねん「汚染おせん水すい」が今いまも大おおきな課題かだいに

なぜ汚染おせん水すいが出でてくる？

１いち号機ごうきから３さん号機ごうきでは溶とけ落おちた核かく燃料ねんりょうを冷ひやすため、原子げんし炉ろに水みずを注そそぐ必要ひつようがあります。これが核かく燃料ねんりょうに触ふれることで、高こう濃度のうどの汚染おせん水すいとなって建屋たきのやの地下ちかにたまっているのです。

さらに山側やまがわからの地下ちか水すいが建屋たきのやに流れ込ながれこむなどして、建屋たきのや内ないの汚染おせん水すいは、2015年度ねんどの平均へいきんで１いち日にち490トンずつ増ふえ続つづけていました。

汚染おせん水すい減へらす対策たいさくは？

東京とうきょう電力でんりょくは汚染おせん水すいを減へらすために建屋たきのやに流れ込ながれこむ地下ちか水すいを抑おさえようと対策たいさくに取り組とりくんできました。

▽建屋たきのやの上流じょうりゅう側がわで地下ちか水すいをくみ上くみあげて海うみに流ながす「地下ちか水すいバイパス」や、

▽建屋たきのや周辺しゅうへんの井戸いどで地下ちか水すいをくみ上くみあげる「サブドレン」と呼よばれるもので、地下ちか水すいが流入りゅうにゅうする量りょうを減へらしてきたのです。

さらに汚染おせん水すい対策たいさくの柱はしらとして2016年ねん３月さんがつから運用うんようが始はじまったのが「凍土とうど壁かべ」です。建屋たきのやの周辺しゅうへんの地盤じばんを凍こおらせて氷こおりの壁かべで取り囲とりかこみ、地下ちか水すいの流入りゅうにゅうを抑おさえる対策たいさくで、パイプに氷点下ひょうてんか30度どの液体えきたいを流ながしておよそ1.5キロの氷こおりの壁かべを作つくり、東京とうきょう電力でんりょくは2017年ねん11月つき、おおむね完成かんせいしたとしました。

この効果こうかについて、東京とうきょう電力でんりょくは発生はっせいする汚染おせん水すいの量りょうは凍土とうど壁かべがない場合ばあいに比くらべ、１いち日にちおよそ95トン減少げんしょうしているという試算しさんを公表こうひょうし、一定いっていの効果こうかがあると評価ひょうかしています。

これらの対策たいさくで、１いち日にち490トン発生はっせいしていた汚染おせん水すいの量りょうは180トンに減へりました。

しかし、凍土とうど壁かべについて、会計かいけい検査けんさ院いんは去年きょねん３月さんがつ、最終さいしゅう的てきな経費けいひが国くにからの補助ほじょ金きんおよそ345億おく円えんを含ふくむ562億おく円えんにのぼるとしたうえで、「凍土とうど壁かべの整備せいびによる効果こうかを適切てきせつに示しめす必要ひつようがある」と指摘してきし、東京とうきょう電力でんりょくは引き続ひきつづき、費用ひよう対たい効果こうかの検証けんしょうを求もとめられています。

タンクには大量たいりょうの水みず

くみ上くみあげられた汚染おせん水すいは専用せんようの設備せつびで放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを取り除とりのぞく処理しょりが進すすめられていますが、トリチウムという放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつは、取り除とりのぞくことができません。

原発げんぱつの敷地しきち内ないで保管ほかんされている汚染おせん水すいを処理しょりしたあとの水みずは112万まんトンで、タンクの数かずは948基きにのぼり、このうち、89％の100万まんトン近ちかくがトリチウムなどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくむ水みずです。

こうした水みずは今いまも増ふえていて、東京とうきょう電力でんりょくは2020年ねん末まつまでに137万まんトンを保管ほかんできる建設けんせつ計画けいかくを示しめしていますが、タンクの建設けんせつに適てきした用地ようちが限界げんかいを迎むかえつつあるといいます。

福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの廃はい炉ろでは取り出とりだした燃料ねんりょうデブリを保管ほかんする場所ばしょなど、今後こんごの作業さぎょうで一定いってい規模きぼの土地とちが必要ひつようになるからだとしています。

水みずをどうするか検討けんとうは難航なんこう

国くにの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは、トリチウムなどを含ふくむ水みずの処分しょぶんを検討けんとうしていて、2016年ねんには海うみへの放出ほうしゅつや地中ちちゅうへの処分しょぶんなど５いつつの方法ほうほうのうち、トリチウムの濃度のうどを基準きじゅん以下いかに薄うすめたうえで、海うみに放出ほうしゅつする方法ほうほうが最もっとも早はやく、低ていコストで処分しょぶんできるとする評価ひょうかをまとめています。

しかし、去年きょねん８月はちがつに福島ふくしま県内けんないなどで開ひらかれた公聴こうちょう会かいでは地元じもとの漁業ぎょぎょう者しゃなどから「風評ふうひょう被害ひがい」を理由りゆうに海うみに放出ほうしゅつするなどの処分しょぶんに反対はんたいする意見いけんが相次あいつぎました。

さらにたまり続つづけている水みずにはトリチウム以外いがいの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつも基準きじゅんを超こえて含ふくまれていることについて東京とうきょう電力でんりょくが十分じゅうぶん、説明せつめいしてこなかったことにも批判ひはんが集あつまり、東京とうきょう電力でんりょくはことし１月いちがつ、専門せんもん家かなどで作つくる委員いいん会かいから「いまだにコミュニケーションが効果こうか的てきにできていないことが不満ふまんだ」と指摘してきを受うけました。

処分しょぶんに対にたいする風評ふうひょう被害ひがいの懸念けねんに加くわえ、東京とうきょう電力でんりょくや国くにの情報じょうほう公開こうかいへの消極しょうきょく的てきな対応たいおうが問題もんだいを複雑ふくざつ化かさせたと言いえます。

トリチウムなどを含ふくむ水みずの取り扱とりあつかいはどうすべきなのか。地元じもとの人ひとだけでなく、国民こくみんの幅広はばひろい理解りかいが欠かかせない問題もんだいです。