新型しんがたコロナで住居じゅうきょ喪失そうしつ 低てい家賃やちんアパートが “奪い合うばいあい” 状態じょうたいに

ＮＨＫえぬえいちけいは、ホテルに宿泊しゅくはくし生活せいかつ保護ほごを申請しんせいするなどした551人にんに、今後こんごの住すまいが確保かくほできているかどうか、都内とないの自治体じちたいにアンケート調査ちょうさを行おこないました。

その結果けっか、先月せんげつ末まつの時点じてんで新あらたな住すまいが決きまっていない人ひとが、392人にんと全体ぜんたいの71％に上のぼることが分わかりました。

理由りゆうは

▽「アパートや困窮こんきゅう者しゃ向むけの宿泊しゅくはく所しょなどの空あきがない」という人ひとが120人にん、

▽今後こんごはネットカフェに戻もどるという人ひとも80人にんいました。

ＮＨＫえぬえいちけいが調しらべたところ、東京とうきょう23区くでは、ことし4月つきの生活せいかつ保護ほごの申請しんせい件数けんすうが2121件けんと、去年きょねんの同おなじ時期じきより40％増ふえています。

このため都心としん部ぶでは、生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょで借かりることができる低てい家賃やちんのアパートがいわば奪い合うばいあいの状態じょうたいになっていて、生活せいかつに困窮こんきゅうする人ひとの住すまいの確保かくほが難むずかしくなっている実態じったいが浮かび上うかびあがっています。

貧困ひんこんや生活せいかつ保護ほごの問題もんだいに詳くわしい日本にっぽん福祉ふくし大学だいがくの山田やまだ壮たけし志郎しろう准じゅん教授きょうじゅは「今回こんかいの緊急きんきゅう事態じたいによって住宅じゅうたく支援しえんの不十分ふじゅうぶんさが表面ひょうめん化かした形かたちだ。ビジネスホテルの滞在たいざい期限きげんが迫せまる中なかで、次つぎの行き先ゆきさきが見みえないのは非常ひじょうに不安ふあんだと思おもう。住居じゅうきょが確保かくほできるまでホテルに宿泊しゅくはくできるようにしたり、生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょの上限じょうげん額がくを引き上ひきあげたりするなど、実態じったいに合あった支援しえんを行おこなうべきだ」と指摘してきしています。

「しっかりした仕事しごと見みつけるには住所じゅうしょ必要ひつようだが…」

「最後さいごのセーフティネット」と呼よばれる生活せいかつ保護ほごを申請しんせいしても住すまいを確保かくほできない人ひとが相次あいついでいます。

先月せんげつ中旬ちゅうじゅん、ＪＲじぇいあ-る新宿しんじゅく駅えき近ちかくの高架こうか下かで寝泊ねとまりをしていた36歳さいの男性だんせいは、これまでネットカフェで寝泊ねとまりしながら都内とないのホテルで働はたらき、月つき27万まん円えんほどの収入しゅうにゅうを得えていました。

しかし、ことし3月末げつまつで退職たいしょくし、転職てんしょく先さきを探さがしていたさなかに感染かんせんが拡大かくだいしました。

ネットカフェも休業きゅうぎょうになり、宿泊しゅくはく施設しせつを転々てんてんとしながら仕事しごとを探さがしていましたが転職てんしょく先さきは見みつからず、所持しょじ金きんも底そこを尽つきました。

このため、初はじめて路上ろじょう生活せいかつを余儀よぎなくされ、公園こうえんの水みずを飲のんで飢うえをしのぎ、寝袋ねぶくろにくるまって過すごす日々ひびが1週間しゅうかんほど続つづいたといいます。

その時ときの状況じょうきょうについて男性だんせいは「『これは悪わるい夢ゆめで目覚めざめたら元もとの生活せいかつに戻もどっている』と何なん度ども考かんがえましたが、朝あさ、目覚めざめると状況じょうきょうは変かわらず、『このまま死しんでしまおうか』と頭あたまによぎりました」と話はなしました。

男性だんせいは悩なやんだ末すえに生活せいかつ保護ほごの申請しんせいを決断けつだんし、当面とうめんは最低さいてい限げんの生活せいかつ費ひの支給しきゅうを受うけながら、東京とうきょう都との支援しえん策さくによって無料むりょうでビジネスホテルに宿泊しゅくはくできることになりました。

家賃やちんの補助ほじょも受うけられる見通みとおしになり、アパートを借かりて生活せいかつを立て直たてなおそうとしました。

しかし、生活せいかつ保護ほごの受給じゅきゅう者しゃを敬遠けいえんする大家おおやも多おおく、男性だんせいには保証ほしょう人じんや緊急きんきゅう連絡れんらく先さきになってくれる家族かぞくもいないため、物件ぶっけん探さがしは難航なんこうしました。

また、生活せいかつ保護ほごを申請しんせいする人ひとが急増きゅうぞうする中なか、家賃やちん補助ほじょの上限じょうげん額がくの月つき5万まん3700円えん以下いかで借かりられる低てい家賃やちんのアパートが奪い合うばいあいの状態じょうたいになっていて、3日にちまでに10軒けんの不動産ふどうさん会社かいしゃに相談そうだんしましたが、入居にゅうきょできるアパートは見みつかっていません。

男性だんせいは「1件けんのアパートを何なん人にんもが争あらそっている状況じょうきょうで、生活せいかつ保護ほごを受給じゅきゅうしてもこんなに厳きびしいのかと正直しょうじき驚おどろきました。しっかりとした仕事しごとを見みつけるためには住所じゅうしょが必要ひつようになると思おもいますが、現状げんじょうは厳きびしく、いつアパートが見みつかるのか不安ふあんです」と話はなしていました。

生活せいかつ保護ほご申請しんせい件数けんすうが4割わり増ぞう 東京とうきょう23区く

感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうが深刻しんこく化かし、経済けいざい的てきに困窮こんきゅうして新あらたに生活せいかつ保護ほごを申請しんせいする人ひとが急増きゅうぞうしています。

感染かんせん拡大かくだいに向むけた取り組とりくみを重点的じゅうてんてきに進すすめる「特定とくてい警戒けいかい都道とどう府県ふけん」に指定していされていた13都道とどう府県ふけんのうち、東京とうきょう23区くと政令せいれい指定してい都市としや県庁けんちょう所在地しょざいちの合あわせて39の自治体じちたいにＮＨＫえぬえいちけいが取材しゅざいしたところ、ことし4月つきの生活せいかつ保護ほごの申請しんせい件数けんすうは8701件けんに上のぼり、去年きょねんの同おなじ時期じきより32％増ふえたことが分わかりました。

中なかでも東京とうきょう23区くの申請しんせい件数けんすうは合あわせて2121件けんに上のぼり、去年きょねんの同おなじ時期じきより40％も増ふえています。

生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょ 単身たんしんで5万まん3700円えんまで

東京とうきょう都とは、緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんに伴ともない住すまいや居場所いばしょを失うしなった人ひとたちの一時いちじ的てきな宿泊しゅくはく施設しせつとして、ビジネスホテルの部屋へやを無料むりょうで提供ていきょうしていて、6月つき1日にち時点じてんで延のべ1094人にんが利用りようしています。

このうち、生活せいかつに困窮こんきゅうし福祉ふくしの窓口まどぐちで生活せいかつ保護ほごを申請しんせいするなどした551人にんがホテルに宿泊しゅくはくできるのは最長さいちょうでも来月らいげつ7日にちまでで、多おおくの人ひとが今後こんごアパートなどを自分じぶんで探さがす必要ひつようがあります。東京とうきょう23区くの生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょの上限じょうげん額がくは、単身たんしん世帯せたいの場合ばあい、原則げんそく、月つき5万まん3700円えんですが、都心としん部ぶでは低てい家賃やちんで借かりることができるアパートの数かずが限かぎられ、生活せいかつ保護ほごの受給じゅきゅう者しゃなどが入居にゅうきょする「無料むりょう低額ていがく宿泊しゅくはく所しょ」もすでに多おおくが満室まんしつの状態じょうたいです。

東京とうきょう都と地域ちいき福祉ふくし課かの畑中はたなか和夫かずお課長かちょうは「アパートを見みつけるのに苦労くろうしている人ひとが多おおく、先月せんげつ末まつまでだったホテルに宿泊しゅくはくできる期間きかんを延長えんちょうするなどの対策たいさくを取とっている。区くや市しは、住すまいが確保かくほできるよう粘り強ねばりづよくサポートしてほしい」と話はなしています。

生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅう者しゃの9割わり以上いじょうが住居じゅうきょ未定みてい 新宿しんじゅく区く

ことし4月つきの生活せいかつ保護ほごの申請しんせい件数けんすうが去年きょねんの同おなじ時期じきより70％余あまりも急増きゅうぞうした新宿しんじゅく区くは、アンケート調査ちょうさに、9割わり以上いじょうの人ひとの今後こんごの住すまいが決きまっていないと回答かいとうしています。

新宿しんじゅく区く生活せいかつ福祉ふくし課かの片岡かたおか丈人たけと課長かちょうは「以前いぜんから新宿しんじゅく区内くないでは、生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょの上限じょうげん額がくで借かりられるアパートがある程度あるていど、埋うまっていたが、感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうで新あらたな需要じゅようが発生はっせいし、対応たいおうが困難こんなんになっている。住すまいを落ち着おちついた場所ばしょにきちんと定さだめていただくことが自立じりつに向むけた大だい前提ぜんていになるので、家賃やちん補助ほじょの額がくを実態じったいに合あわせて引き上ひきあげるよう国こくに要望ようぼうしていきたい」と話はなしています。

また、アンケートに回答かいとうした別べつの自治体じちたいの担当たんとう者しゃは「生活せいかつ保護ほごの家賃やちん補助ほじょで借かりられるアパートがもともと地域ちいきに少すくなく、生活せいかつ保護ほごの急増きゅうぞうで物件ぶっけんが“取り合とりあい”とも言いえる状態じょうたいになっている。ビジネスホテルに宿泊しゅくはくできる都との支援しえん策さくが期限きげんを迎むかえ、次つぎの住すまいが見みつからなければ、生活せいかつ保護ほごを受うけても一時いちじ的てきにネットカフェに戻もどらざるをえない深刻しんこくな状況じょうきょうにある」と話はなしています。

生活せいかつ保護ほご申請しんせい者しゃ 働はたらき盛ざかり中心ちゅうしんに幅広はばひろい世代せだいが

アンケートでは、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで住すまいや居場所いばしょを失うしない、生活せいかつ保護ほごを申請しんせいするなどした551人にんの年代ねんだいや性別せいべつについても調査ちょうさしました。

▽50代だいが143人にんと最もっとも多おおく、

▽30代だいが122人にん、

▽40代だいが120人にん、

▽60代だいが78人にん、

▽20代だいが60人にんなどとなっていて、働はたらき盛ざかりの世代せだいを中心ちゅうしんに幅広はばひろい年代ねんだいの人ひとたちが感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうを受うけている実態じったいが明あきらかになりました。

男女だんじょ別べつでは

▽男性だんせいが477人にん、

▽女性じょせいが74人にんです。

生活せいかつ保護ほごの受給じゅきゅう者しゃの住宅じゅうたく支援しえんについて課題かだいだと感かんじる点てんについて複数ふくすう回答かいとうで尋たずねたところ、東京とうきょう23区くのうち15の区くが「生活せいかつ保護ほごの基準きじゅん額がくで入いれるアパートが少すくない」と回答かいとうしました。

また「区内くない全域ぜんいきで再さい開発かいはつが行おこなわれ、基準きじゅん額がくで入居にゅうきょできる古ふるいアパートがなくなってきた」などと、時代じだいの変化へんかで生活せいかつに困窮こんきゅうした人ひとの住すまいの確保かくほが厳きびしくなっていることをうかがわせる回答かいとうもありました。