芥川賞 高山さん「また別のプレーボールがかかった感じ」
芥川賞に選ばれた高山羽根子さんは、記者会見で「平たく言うと、ほっとしたという気持ちです。あとちょっと書かせてもらえる、書いても大丈夫だと思えることができたのが、いちばんほっとしました」と喜びを語りました。
沖縄を舞台にした作品を書いたことについては、「沖縄に行った経験が先にあって、それから生まれた形です。書こうと思って行ったのではなくて、行かせていただいた縁というか、経験があってそこから生まれた形です」と説明しました。
また、3回目の候補での受賞については、「これがゴールではなく、また別のプレーボールがかかった感じで、受賞したことでフィールドの端っこに立たせてもらえたという思いです」と野球好きの高山さんならではの表現で心境を述べました。
そして今後の作品づくりについて、「作品の舞台にするその土地に行かないと書けないことがたくさんあるので、現地での取材が難しい状況にはなっていますが、その中でも2020年の前後で東京でものすごく風景が変わっているので、それを記録したいとすごく思っていて、書かなければいけないものの一つだと感じています」と話していました。
芥川賞 遠野さん「自分のペースでやっていきたい」
芥川賞に選ばれた遠野遥さんは、緊張した面持ちで記者会見に臨み、「先ほどお電話いただいたばかりですので、非常に驚いたままで頭が追いついていないような状況です」と受賞の驚きを口にしました。
そのうえで、「非常に歴史がある賞だと認識していて、有名な作家やすごい作家が名を連ねている賞だと思うので、その末席に加われることは非常に名誉なことだと思っています」と喜びを語りました。
また、選考委員から「主人公のアンバランスさが新鮮だ」と評価されたことについて、「自分では変なキャラにしようと思ってはいなくて、人によっては『気持ち悪い』とか『共感できない』とかおっしゃるんですけど、そんな風に書いたわけではないのになと思います。もう少し親しみを持ってもらえたらなと思っています」と話していました。
さらに、今後について問われると、「この受賞が何かのゴールではないと思うので、引き続き頑張りたいと思います。特にこの賞をとったから執筆に対する思いが変わるということではなく、自分のペースでやっていきたい」と意気込んでいました。
直木賞 馳さん「人間はどう生きていくか」
直木賞に選ばれた馳星周さんは、出身地の北海道浦河町からテレビ会議システムを使って記者会見に臨みました。
受賞の瞬間を故郷で迎えたことについて、「去年から夏を生まれ故郷で過ごすようにしていたので、今回この時期に候補に選ばれたので巡り合わせとしておもしろいと思って発表を待っていました。受賞が決まり、地元ではとても喜んでもらえたのでありがたいです」と話していました。
7回目の候補での受賞については、「40代半ばくらいから書きたいものを書きたいように書くという心境になり、その1つとして今回の作品を評価していただけたことをうれしく思います。これまで受賞できかなったのは自分の未熟さゆえであり、今回受賞できたことは20年以上、小説と向き合ってきたことが評価されたのだろうと思っています」と振り返りました。
また、犬を物語の軸にした作品を書いたことについては「人間だけの話だと悲惨になる一方だが、動物が出てくることで救いが生まれるという考えは、頭の中にありました。動物を出す小説はずるいと言われるのは分かっていましたが、25年以上、犬と暮らしているので、書かざるをえないものであり、自分としても書きたかった」と話していました。
そして、受賞作の中に東日本大震災や熊本地震を盛り込んだことを踏まえて、「最近の豪雨も含めて自然災害が日常になりつつあり、それは僕たち人間の暮らし方が起因しているのではないかと思っている。人間はどう生きていくかということを考えながら、これからの小説を書いていくんだろうと感じています」と話していました。