セッションズ氏は、強硬な移民対策を主張してトランプ大統領が掲げるメキシコとの国境沿いの壁の建設を強く支持し、司法長官に起用されましたが、トランプ大統領はその後、いわゆるロシア疑惑をめぐってセッションズ長官の対応に不満を募らせ、両者の関係は悪化していたとされています。
ロシア疑惑をめぐってアメリカ司法省は、FBI=連邦捜査局のモラー元長官を独立性の高い特別検察官に任命し、その捜査は大詰めを迎えているという見方もあります。
こうした中、中間選挙が行われた翌日に大統領が人事権を行使し、司法省トップの司法長官を解任したことは、大きな議論を呼ぶことになりそうです。
セッションズ氏とは
セッションズ氏は去年2月、トランプ政権で司法長官に就任しました。
共和党の元上院議員で、2年前の大統領選挙では上院議員の中で最も早くトランプ氏への支持を表明し、陣営の重鎮として政策アドバイザーを務めました。
特にトランプ大統領が掲げる、メキシコとの国境への壁の建設を強く支持するなど、トランプ大統領の強硬な移民政策を支持していたことで知られます。
ロシアがサイバー攻撃を通じてアメリカ大統領選挙に干渉していたとされる、いわゆる「ロシア疑惑」が問題化する中、セッションズ長官は、就任前にロシアの駐米大使と接触していながら明らかにしていなかったことが批判されると、司法のトップでありながら、ロシア疑惑の捜査には関与しないと表明しました。
その後、司法省が任命したモラー特別検察官のもと、トランプ大統領の元側近が相次いで司法取引に応じてロシア疑惑の捜査に協力する意向を示すと、捜査の手がトランプ大統領へと近づいているという見方が広がりました。
こうした過程でトランプ大統領はセッションズ司法長官に不満を募らせたとみられ、ツイッターに事実上、捜査の中止を求める書き込みをするなど、名指しで非難するようになりました。
ことし8月のテレビのインタビューでトランプ大統領が「司法省を統制していない」と批判すると、セッションズ司法長官は声明で「私が司法長官であるかぎり、司法省は政治的な配慮によって不適切に影響を受けることはない」と反論するなど、非難の応酬が繰り広げられました。
トランプ大統領が中間選挙のあとにセッションズ長官の解任を検討しているとの臆測も出ていました。
辞表に日時の記載なし 「あなたの求めに応じて提出」
セッションズ司法長官がトランプ大統領に提出した辞表には、日時は記されておらず「あなたの求めに応じて、辞表を提出する」と書かれています。
一方で、司法長官として不法移民や薬物の問題で成果を出したとしたうえで、トランプ大統領に対して政権で働く機会を得たことに謝意を示しています。
ウイットエーカー氏とは
ウイットエーカー氏は、去年8月にアメリカのメディアに寄稿し、ロシア疑惑の捜査に懸念を示すトランプ大統領に同意する考えを示したうえで権限を越えて捜査しているとしてモラー特別検察官を非難していました。
寄稿の中でウイットエーカー氏は、トランプ大統領がロシア疑惑をめぐる捜査に懸念を示したことについて「大統領は完全に正しい。モラー特別検察官は、越えてはならない一線に近づいている」と指摘し、トランプ大統領に同意する考えを示しています。
さらに「モラー特別検察官は権限の範囲を越えて捜査している。非常に懸念される」と記し、ロシア疑惑の捜査にあたっているモラー特別検察官を非難していました。
民主党「権力の乱用 法の支配が危険に」
トランプ大統領がセッションズ司法長官を解任したことについて、野党・民主党は声明を発表し、「はなはだしい権力の乱用で、法の支配を危険にさらしている」と非難しました。
また、トランプ大統領が司法長官の代行に起用したウイットエーカー氏について、ロシア疑惑をめぐるモラー特別検察官による捜査に対して批判的な人物だと指摘したうえで、「潜在的な犯罪の結果からトランプ大統領を守る忠実な部下だ」と批判し、今回の解任劇の背景にはロシア疑惑をめぐる捜査があるという見方を示しました。
そのうえで声明は「大統領はロシア疑惑をめぐる捜査へのいかなる干渉にも責任を問われる」と強調し、トランプ大統領を強くけん制しています。