法律では、日本司法支援センター=法テラスの業務を拡充し、被害者が収入などにかかわらず民事訴訟の支援などを受けられるようにするとしています。
また、国が裁判所に解散命令を請求した宗教法人について、資産状況を適時把握できるようにするため、不動産を処分する前に行政機関への届け出を義務づけるほか、財産目録を3か月ごとに提出することも盛り込まれています。
一方、法律の付則には、与野党の修正協議を踏まえ、3年後をめどに財産保全の在り方を含めて検討することが明記されています。
13日の参議院本会議で、採決が行われ、自民・公明両党、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。
旧統一教会 2世の男性 “立法の内容には課題残る”
両親がともに旧統一教会信者で、教団への高額献金によって家庭が経済的に苦しかったという30代の男性は「国として、まず法律を作ることで被害者を救済しようという取り組みを進めてくれたことは、よい方向だったと思う」としたうえで、「被害者から不当に収奪した結果である教団の財産を、まず保全する、動かせないようにすることを自分たちは求めてきたので、立法の内容については課題が残ると考えている」と語りました。
男性は「これまで多くの被害を見過ごしてきた国の責任は、とても大きいと思う。付帯決議の中に『具体的な課題が生じた場合は、財産保全のあり方も含めて検討する』という内容が盛り込まれているが、そのタイミングは絶対に来るので、今回の国会での議論を思い起こしてもらいたい」と話していました。
専門家 “実際の被害への認識が甘い印象”
宗教社会学が専門で、旧統一教会をめぐる問題に詳しい北海道大学の櫻井義秀教授は、今回の救済法について「端的に言えば、高額献金などの被害者に対し、自分で裁判を起こし被害を確定させて取り戻すよう求めるものだが、被害者は教団から領収書の発行を受けていないなどの理由で、被害の有無や金額を確定できず、裁判を起こすことさえ難しいという前提がある」と指摘しました。
また、教団の財産保全のあり方も含めて、「3年後をめどに検討する」とされていることについて、「被害者側の債権を確定させる裁判や判決がないうえ、解散命令請求の審理の途中で踏み込めないという論理だと思うが、実際の被害への認識が甘いのではないかという印象を受ける」と述べました。
そのうえで、「被害者が法テラスの支援を受けて裁判を行えるということは示されているので、法律家が介入して、明確に被害があることをアピールし、適切な判決を得ていくことが重要だ」と話しました。