警察によりますと高丸山トンネルの中を走行中、46歳の男性運転手が突然、意識を失い、バスが蛇行し始めたということで、異変に気付いた乗客たちが壁に接触しながら走行していたバスを停車させました。
バスには当時、運転手と添乗員、乗客の合わせて35人が乗っていましたが、全員にけがはなく、ほかの車両を巻き込むこともありませんでした。
警察などによりますと、観光バスは15日朝早くに浜松市内の営業所を出発したあと、愛知県豊橋市で乗客を乗せ、和歌山県串本町へ向かう途中でした。
運転手は病院に搬送され治療を受けているということで、警察が当時の状況などを詳しく調べています。
乗客「いろいろなスイッチ触りエンジン止めた」
バスを停車させた乗客の男性は当時の状況について「トンネルに入ったあとバスのタイヤが側壁に接触したので、おかしいと思って運転席に行くと、運転手が口から泡を吹いて意識を失っていました」と話しました。
そして「もう1人の乗客とハンドルを握って対面通行の対向車にぶつからないようにしました。とにかくいろいろなスイッチを触ってなんとかエンジンを止めてバスを停車させました」と話していました。
男性はバスが蛇行運転を始めてから停車するまでの時間を2分間から3分間くらいだと感じたということで「当時は心臓がばくばくしていました。乗客にけが人がおらず無事でよかったとよろこんでいます」と話していました。
バス会社「健康状態に問題なし」
バスを運行した浜松市の「ラビット急行」によりますと、運転手の男性は15日午前5時20分ごろ浜松市内の営業所に出社したあと、バスでJR豊橋駅に向かい、客を乗せて出発したということです。
運転手は14日は一日休暇を取得し、15日朝、出社後に行った健康チェックでは問題がなかったということです。
この運転手は平成21年からこの会社で働いていて、これまで健康状態などに問題はなかったということです。
ラビット急行は平成6年に設立され、大型バス26台を含む32台のバスで浜松市や愛知県豊橋市の営業拠点を中心にバスの運行事業を行っています。
運転手は36人いて、年2回の健康診断のほかに健康講習も行うなど、運転手の健康管理を徹底していたとしています。
ラビット急行の鈴木良太総務課長は「ご迷惑をおかけしてすみません。ドライバーを含む社員の健康管理に力を入れていただけに、こうした事態になりショックです。今後こうしたことが起きないよう再発防止策を検討していきます」と話しています。
相次ぐ運転手の意識喪失
バスの運転手が病気や体調不良などで運転中に意識を失うケースは各地で相次いでいます。
▽先月28日、横浜市で路線バスが乗用車に追突し、母親と一緒にバスに乗っていた16歳の高校生が死亡しました。
逮捕されたバスの運転手は睡眠時無呼吸症候群と診断されていました。
▽ことし6月、富山県南砺市の東海北陸自動車道で走行中の観光バスの運転手がくも膜下出血で意識を失い、異変に気づいた乗客らがバスを緊急停止させましたが、3人がけがをしました。
▽5年前には三重県亀山市の東名阪自動車道でも観光バスの運転手が突然意識を失い、乗客3人がハンドルを操作するなどしてバスを停車させました。
乗客にけがはありませんでしたが、運転手は死亡しました。
国土交通省のまとめによりますと、こうした事故はおととしまでの5年間に60件起き、脳や心臓の病気が原因で意識を失ったケースが多いということです。
事故を受けて東京都は、都営バスに勤務するすべての運転手を対象に、今年度からMRIを使った脳の検査を3年に1度受けるよう義務づけ、岐阜市の会社が運転手全員に脳の病気を調べる「脳ドック」の受診を義務づけるなど、運転手の健康管理に重点を置いた対策もとられ始めています。