戦艦せんかん「比叡ひえい」見みつかる 太平洋たいへいよう戦争せんそう中ちゅうに沈没ちんぼつ 謎なぞの解明かいめいも…

アレン氏しは去年きょねん10月つきに病気びょうきで亡なくなりましたが、調査ちょうさチームはアレン氏しの遺志いしを継ついで特殊とくしゅな装備そうびを備そなえた調査ちょうさ船せんを使つかって太平洋たいへいよう戦争せんそうで沈没ちんぼつした軍艦ぐんかんを探さがし続つづけていました。

調査ちょうさチームによりますと、先月せんげつ31日にち、ソロモン諸島しょとうのサボ島とうの北西ほくせいの深ふかさ985ｍめ-とるの海底かいていで、戦艦せんかん「比叡ひえい」を発見はっけんしました。

ソナーが捉とらえた形状けいじょうからは、船腹せんぷくを上うえにした状態じょうたいで海底かいていに沈しずんでいるのがわかります。

また、潜水せんすい艇ていから撮影さつえいした映像えいぞうには、巨大きょだいなスクリュープロペラやかじ、高角こうかく砲ほうの砲身ほうしんなどが映うつっています。

「比叡ひえい」は大正たいしょう３さん年ねんにしゅんこうし、たび重かさなる改装かいそうを経へて、太平洋たいへいよう戦争せんそうの緒戦しょせんで真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきにも参加さんかしました。

その後そのご、ソロモン諸島しょとうのガダルカナル島とうをめぐる戦たたかいに投入とうにゅうされ、昭和しょうわ17年ねん11月つきの第だい三さん次じソロモン海戦かいせんで連合れんごう国こくの艦隊かんたいの攻撃こうげきを受うけて航行こうこう不能ふのうとなり、最期さいごはみずから船内せんないに水みずを入いれて沈しずんだとされてきました。

ところが、ＮＨＫえぬえいちけいが、広島ひろしま県けん呉くれ市しの大和やまとミュージアムの館長かんちょうで、旧きゅう日本にっぽん海軍かいぐんの歴史れきしに詳くわしい戸と高だか一いち成せいさんに映像えいぞうを分析ぶんせきしてもらったところ、船体せんたいのおよそ３さん分ぶんの１いちが切断せつだんされているとみられ、大おおきな爆発ばくはつによって沈没ちんぼつした可能かのう性せいが高たかいことが初はじめてわかりました。

戸と高だかさんは、「比叡ひえいは太平洋たいへいよう戦争せんそうの主要しゅような戦たたかいに真っ先まっさきに投入とうにゅうされ、歴史れきし的てきな場面ばめんにたくさん登場とうじょうしてきた戦艦せんかんで、歴史れきし的てきに謎なぞだった部分ぶぶんが解き明ときあかされることはとても大切たいせつだ」と述のべて、今回こんかいの発見はっけんの意義いぎを強調きょうちょうしました。

調査ちょうさチームは今後こんご、潜水せんすい艇ていで撮影さつえいした船体せんたいの写真しゃしんなどを順次じゅんじ、公開こうかいし、研究けんきゅうや調査ちょうさに役立やくだてたいとしています。

戦艦せんかん「比叡ひえい」とは

戦艦せんかん「比叡ひえい」は、明治めいじ44年ねんに起工きこうされ、大正たいしょう３さん年ねんにしゅんこうするとすぐに第だい１いち次じ世界せかい大戦たいせんのために東シナ海ひがししなかいに派遣はけんされました。

その後そのご、世界せかい的てきに軍縮ぐんしゅくの流ながれが強つよまる中なか、昭和しょうわ８はち年ねんに訓練くんれんに使つかわれる「練習れんしゅう戦艦せんかん」に改装かいそうされ、訓練くんれんのほか、昭和しょうわ天皇てんのうが乗艦じょうかんする「御召おめし艦かん」としても使つかわれました。

昭和しょうわ11年ねんには改あらためて戦艦せんかんに改装かいそうされ、装備そうびの配置はいちなどが後のちに建造けんぞうされる戦艦せんかん「大和やまと」の設計せっけいに生いかされました。

太平洋たいへいよう戦争せんそうでは、真珠湾しんじゅわん攻撃こうげきで日本にっぽんの航空こうくう母艦ぼかん部隊ぶたいの護衛ごえいとして参加さんかし、その後そのご、激戦げきせんとなったソロモン諸島しょとうのガダルカナル島とうをめぐる戦たたかいに投入とうにゅうされます。

昭和しょうわ17年ねん11月つき、日本にっぽん軍ぐんと、アメリカを中心ちゅうしんとする連合れんごう軍ぐんの間まで激はげしい戦闘せんとうが続つづく中なか、比叡ひえいは日本にっぽん軍ぐんに補給ほきゅうを行おこなう輸送ゆそう船せんを護衛ごえいするとともに、連合れんごう軍ぐんの飛行場ひこうじょうを砲撃ほうげきするためにガダルカナル島とうに向むけて出撃しゅつげきしますが、連合れんごう軍ぐんの艦隊かんたいと遭遇そうぐうし、集中しゅうちゅう的てきに攻撃こうげきを受うけます。

その結果けっか、かじが効きかなくなって航行こうこう不能ふのうとなり、総員そういん退しさ艦かんの上うえ、みずから船内せんないに水みずを入いれて沈しずんだとされてきました。

「比叡ひえい」は太平洋たいへいよう戦争せんそうで初はじめて沈しずんだ日本にっぽんの戦艦せんかんで、この戦闘せんとうで死亡しぼうした乗組のりくみ員いんは188人にんでした。

比叡ひえいが発見はっけんされたのは

比叡ひえいが発見はっけんされたのはガダルカナル島とうの北側きたがわにあるサボ島とうの北西ほくせいです。

この海域かいいきは、太平洋たいへいよう戦争せんそうで、日本にっぽん軍ぐんと、アメリカ軍ぐんを中心ちゅうしんとした連合れんごう軍ぐんが激はげしい戦たたかいを繰り広くりひろげ、数多かずおおくの船ふねが沈しずんでいることから「アイアンボトム・サウンド」＝「鉄てつ底そこの海峡かいきょう」とも呼よばれています。

無人むじんの潜水せんすい艇ていが撮影さつえいした映像えいぞうには船ふねの進路しんろを変かえるための「かじ」、それに巨大きょだいなスクリュープロペラや、エンジン部分ぶぶんとつながるシャフトが見みえます。

また、比叡ひえいが備そなえていた12.7センチ高角こうかく砲ほうの砲身ほうしんや、対空たいくう防御ぼうぎょ用ようの機関きかん銃じゅうの弾丸だんがんが入はいった箱はこも映うつっています。

調査ちょうさの結果けっか、今回こんかい、見みつかったのは、全長ぜんちょう222ｍめ-とるの比叡ひえいの船体せんたいのうち、およそ150ｍめ-とるで、前方ぜんぽうの70ｍめ-とる余あまりは発見はっけんできなかったということです。

比叡ひえいは沈没ちんぼつするときの様子ようすを目撃もくげきした人ひとがいないため、どのように沈しずんだか謎なぞとされてきましたが、今回こんかいの発見はっけんは最期さいごの様子ようすを知しる手てがかりとして期待きたいされています。

専門せんもん家か「船体せんたいが切断せつだんされていたのは新しん発見はっけん」

広島ひろしま県けん呉くれ市しの大和やまとミュージアムの館長かんちょうで、旧きゅう日本にっぽん海軍かいぐんの歴史れきしに詳くわしい戸と高だか一いち成せいさんは、映像えいぞうを分析ぶんせきしたところ、船体せんたいの３さん分ぶんの１いちが切断せつだんされているように見みえるとし、「比叡ひえいの最期さいごは目撃もくげき者しゃがいないため、どのように沈しずんだかわからなかったが、船体せんたいが切断せつだんされていたのは新あらたな発見はっけんだ」と指摘してきしました。

そして、「比叡ひえいはみずから艦内かんないに注水ちゅうすいして静しずかに沈しずんだとみられてきたので、こんなに壊こわれていたとは思おもわなかった。船体せんたいが切断せつだんされているということは、大おおきな爆発ばくはつが起おきた可能かのう性せいが高たかい。乗組のりくみ員いんが脱出だっしゅつし、現場げんばを離はなれた後のちに爆発ばくはつが起おきて沈しずんだのではないか」と分析ぶんせきしました。

また、船ふねの方向ほうこうを変かえるための「かじ」の状態じょうたいに着目ちゃくもくし、「ふたつのかじが接触せっしょくしていて面めんかじ＝右みぎ方向ほうこうに曲まがる状態じょうたいになっている。比叡ひえいは艦かん尾おのかじ近ちかくに連合れんごう軍ぐんの砲撃ほうげきを受うけ、右みぎ方向ほうこうに旋回せんかいすることしかできなくなり、戦場せんじょうから離脱りだつできないために艦かんを放棄ほうきしたと報告ほうこくされていたが、なぜかじが効きかなくなったのか、その原因げんいんがはっきりとわかった」と述のべ、映像えいぞうに映うつっていたかじの状態じょうたいは、当時とうじの記録きろくを裏付うらづけるものだと指摘してきしました。

そのうえで戸と高だかさんは、「比叡ひえいは太平洋たいへいよう戦争せんそうの主要しゅような戦たたかいに真っ先まっさきに投入とうにゅうされ、歴史れきし的てきな場面ばめんにたくさん登場とうじょうしてきた戦艦せんかんであり、歴史れきし的てきに謎なぞだった部分ぶぶんが解き明ときあかされることはとても大切たいせつだ。今回こんかいの発見はっけんは、戦争せんそうを経験けいけんした人ひとがいなくなり、記憶きおくのかなたに消きえようとしている中なか、戦争せんそうの現実げんじつを強つよく思い起おもいおこさせるものだ」と述のべ、発見はっけんの意義いぎを強調きょうちょうしました。