愛知県豊田市で
生後11
か月の
3つ
子の
母親が
次男を
床にたたきつけて
死亡させた
事件を
受けて、
市の
対応を
検証していた
有識者の
委員会は、
双子や
3つ
子を
育てる「
多胎家庭」
に対する
行政側の
支援体制が
欠如していた
などとする
報告書をまとめました。
去年1月、
愛知県豊田市で
当時30
歳の
母親が
生後11
か月の
3つ
子の
うち次男を
自宅の
床にたたきつけて
死亡させ、
傷害致死の
罪に
問われた
裁判では、
弁護側が「
周囲の
支援がなく
重度の
うつ病だった」と
主張しましたが、
名古屋地方裁判所岡崎支部はことし
3月、
懲役3年6か月の
実刑判決を
言い渡しました。
弁護側は
控訴しています。
この事件を受けて、豊田市は有識者による委員会を設置して行政側の対応を検証し、17日、結果を公表しました。
報告書では、妊娠期から事件発生まで、行政が母親と接点を持った4つの段階ごとに問題点を検証していて、このうち、妊娠期については、3つ子を出産することへの不安が解消されないまま出産に至った経緯に触れ、双子や3つ子を妊娠した母親に対する行政の支援体制が欠如していたとしました。
また、3、4か月健診から父親の育休が終わるまでの期間については、母親が健診で「子どもの口をふさいだことがある」と申し出ていたのに具体的な対応につながらなかったのは、虐待の疑いに対して予防的に介入することへの認識が不足していたと指摘しました。
父親が職場に復帰したあとについては、父母の本当のニーズが把握できるほど十分な関わりができておらず、多胎家庭の視点に立った問題意識が希薄だったとしました。
報告書では最後に、虐待を防ぐため、妊娠期から、支援を必要とする家庭を把握するとともに、相談体制の強化と職員の資質の向上が必要だとして、妊娠期からの切れ目のない支援の仕組み作りを求めました。
検証委員会「行政は重く受け止めるべき」
検証委員会の委員長を務める日本福祉大学の渡邊忍教授は、記者会見で「今回の事件は多胎児支援への課題を示した。行政の情報の共有が不十分で、適切な時期に対応がなされなかったことが、母親が孤立し、疲弊した育児につながったと言え、行政側は重く受け止めるべきだ」と述べました。
豊田市子ども家庭課の塚田知宏課長は「市として事件後にとった対応策は事件の前にもできたものだと真摯(しんし)に受け止めたい。多胎家庭には公的な支援が必要だという認識を持ち改善策につなげたい」と話しました。
「多胎家庭」対象に独自の支援
豊田市は事件後、3つ子や双子を持つ「多胎家庭」を対象にした独自の支援策を始めています。
今年度からは、3つ子や双子を育てる家庭がこども園に入園しやすくする取り組みを始めたほか、家事を手伝うヘルパーの利用期間を多胎家庭については長くしました。
また、出産前に必要な情報が得られるよう、ことしから双子や3つ子を出産予定の親に特化した教室を定期的に開催しています。
今回の事件をめぐっては、刑が重過ぎるとして母親が控訴していて、来月、2審の名古屋高等裁判所で審理が始まることになっています。