この中で林鄭長官は、収束の見通しが立たない抗議活動について「行政長官として、香港でこのような大混乱を引き起こしたことは決して許されることではありません。もし私に選択肢があるなら、真っ先にすることは辞めることです。辞任して深く謝罪したいです。皆さんに許しを請いたいと思います」と述べました。
ただ、その一方で「(米中という)2つの経済大国の関係がかつてない緊張状態にある中、香港の問題が国家の主権や安全保障のレベルに格上げされてしまいました。残念ながら、憲法上、行政長官は中国政府と香港市民という2人の主人に仕える身で、政治的に解決できる余地は非常に限られています」と述べ、抗議活動で要求されているみずからの辞任も含め、重要な決定ができないことをにじませました。
さらに林鄭長官は「正直に言って、皆さんに対して『物事はうまくいく』とか『期限を設けている』などといった、成功が約束されたような見通しを示せるかというと、そう単純ではないと思います。しかし『中国政府は期限を設けていない』と断言できます。彼らは期限を設けることで波紋が広がることを分かっています」と述べ、一連の抗議活動に対する中国政府の見方についても言及しました。
そのうえで、今後の見通しについて「10月1日は建国記念日ですが、まだ多くの混乱が起きているため、質素かつ厳粛な祝賀行事を行おうと考えています。これが意味するのは、中国政府も香港政府も、10月1日より前に現状を解決できるとは期待していないということです」と述べ、混乱の収束には時間がかかると示唆しました。
さらに、市民の間で懸念が高まっている中国政府による武力介入について「もう一つ断言したいのは、議論を通じて私が感じていることですが、中国は決して人民解放軍を送り込む計画は持っていないということです」と述べ、可能性は低いという見方を示しました。
みずからの置かれた立場を冷静に分析する一方、林鄭長官は「私は今、外出がとても難しいです。道を歩くことや買い物に行くこと、さらには美容院に行くこともできません。私がどこにいるかはソーシャルメディアですぐに拡散し、黒いTシャツを着て黒いマスクをした若者たちが私を待ち構えることになります」と述べ、身動きが取れない苦しい現状を述べています。
林鄭長官は3日に行われた記者会見で、音声は自分のものだと認めました。ただ、あくまで私的な会合での発言だったと弁明し、辞任する考えがないことを改めて強調しました。