ノーベル化学かがく賞しょう「量子りょうしドット」発見はっけんのアメリカの研究けんきゅう者しゃら3人にんに

スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは、日本にっぽん時間じかんの4日にち午後ごご7時じ前まえ、ことしのノーベル化学かがく賞しょうの受賞じゅしょう者しゃを発表はっぴょうしました。

受賞じゅしょうが決きまったのは、

▽アメリカのマサチューセッツ工科大学まさちゅ-せっつこうかだいがくのムンジ・バウェンディ教授きょうじゅ、

▽アメリカのコロンビア大学ころんびあだいがくのルイス・ブルース教授きょうじゅ、

▽旧きゅうソビエト出身しゅっしんのアレクセイ・エキモフ氏しの3人にんです。

エキモフ氏しとブルース教授きょうじゅは1980年代ねんだいにそれぞれ別べつの方法ほうほうで、同おなじ化合かごう物ぶつでも1ミリの100万まん分ぶんの1という「ナノ」サイズの結晶けっしょうになると、わずかな大おおきさの違ちがいで、発はっする光ひかりの色いろが変かわることを発見はっけんしました。

そして、バウェンディ教授きょうじゅは1990年代ねんだい、発はっする光ひかりが強つよいうえ、ねらったとおりの大おおきさの「ナノ」サイズの結晶けっしょうを安定あんてい的てきに製造せいぞうする技術ぎじゅつを開発かいはつしました。

3人にんが発見はっけんするなどした「ナノ」サイズの結晶けっしょうは「量子りょうしドット」と呼よばれ、さまざまな色いろの光ひかりを発はっする特性とくせいがテレビの画面がめんやLEDの照明しょうめいなどで活用かつようされているほか、医療いりょうの現場げんばでの応用おうようも期待きたいされています。

選考せんこう委員いいん会かい「人類じんるいに最大さいだいの恩恵おんけい」

ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは3人にんの功績こうせきについて「ナノテクノロジーの分野ぶんやにとって重要じゅうような種たねをまいた。量子りょうしドットは現在げんざい、テレビやLED照明しょうめいなどさまざまな場面ばめんで役割やくわりを果はたしている」としています。

その上うえで「量子りょうしドットは人類じんるいに最大さいだいの恩恵おんけいをもたらしつつある。将来しょうらい的てきには極きわめて小ちいさなセンサーや太陽たいよう電池でんちの薄型うすがた化かなどにも貢献こうけんする可能かのう性せいがある。われわれはその可能かのう性せいを探究たんきゅうし始はじめたばかりだ」と評価ひょうかしています。

バウェンディ教授きょうじゅ「とても光栄こうえい」

ノーベル化学かがく賞しょうに選えらばれたアメリカのマサチューセッツ工科大学まさちゅ-せっつこうかだいがくのムンジ・バウェンディ教授きょうじゅは、ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいとの電話でんわでのインタビューで、「とても驚おどろきました。眠ねむかったですが、予期よきしていないことで、とても光栄こうえいです」と喜よろこびをあらわにしました。

また、記者きしゃからノーベル賞しょうに選えらばれると思おもっていたかと尋たずねられると「多おおくの人ひとがこの分野ぶんやの研究けんきゅうに貢献こうけんしてきました。研究けんきゅうは全員ぜんいんで取り組とりくんできたもので、自分じぶんが受賞じゅしょうできるとは思おもっていませんでした」と応おうじました。

その上うえで「研究けんきゅう当初とうしょは社会しゃかいにどんな影響えいきょうをもたらすことができるかわかりませんでしたが、この分野ぶんやはとても刺激しげき的てきで、今後こんごも興味深きょうみぶかい成果せいかが出でてくることは間違まちがいないと思おもいます」と話はなしていました。

《量子りょうしドット 研究けんきゅう者しゃから喜よろこびの声こえ》

「研究けんきゅう者しゃを勇気ゆうきづける」

長年ながねんにわたり量子りょうしドットの研究けんきゅうを行おこなってきた東京とうきょう大学だいがく名誉めいよ教授きょうじゅの荒川あらかわ泰彦やすひこさんは（70）「量子りょうしドットの受賞じゅしょうはありうるとは思おもっていたが、すこし驚おどろいた。量子りょうしドットは髪の毛かみのけの太ふとさの5万まん分ぶんの1ほどの小ちいさな構造こうぞうの粒子りゅうしの中なかに電子でんしを閉じ込とじこめてサイズや形状けいじょうをコントロールする技術ぎじゅつで、電子でんしの性質せいしつを制御せいぎょし尽つくすことができる。すでに発光はっこうデバイスなどに応用おうようされているが、テレビやスマートフォンなどの画面がめんなどにも応用おうようが可能かのうで現在げんざい、国内こくないでも企業きぎょうが参画さんかくして開発かいはつしているところだ。将来しょうらい的てきには画質がしつの向上こうじょうのほか消費しょうひ電力でんりょくが削減さくげんされ生産せいさんコストも下さがることが期待きたいされる」と話はなしていました。

そして、「今回こんかい、受賞じゅしょうした3人にんとは同おなじ国際こくさい学会がっかいなどで一緒いっしょになったことがあるが、私わたし自身じしんは少すこし分野ぶんやが異ことなるため、あまり面識めんしきはなかった。ただ、量子りょうしドットという科学かがくがこれまで発展はってんし、社会しゃかいに普及ふきゅうしてきていることをノーベル財団ざいだんがきちんと認識にんしきしていたということは、この分野ぶんやの研究けんきゅう者しゃをさらに勇気ゆうきづけるものになるだろう」と話はなしていました。

「研究けんきゅうが進展しんてんしていく」

「量子りょうしドット」が専門せんもんの名古屋なごや大学だいがく大学院だいがくいんの鳥とり本ほん司つかさ教授きょうじゅは、NHKの取材しゅざいに対にたいし「世界せかいを大おおきく変かえる力ちからがあり、この研究けんきゅうが選えらばれて大変たいへんうれしい」と話はなしていました。

その上うえで「量子りょうしドット」について「すでにテレビのモニターにも使つかわれ、よりきれいで低てい電力でんりょくのモニターへの実用じつよう化かが進すすめられている。また、超ちょう高こう効率こうりつの太陽たいよう電池でんちをつくることができると考かんがえられていて、もし実用じつよう化かすれば世界せかいのエネルギー問題もんだいを解決かいけつする技術ぎじゅつになる可能かのう性せいがある」と説明せつめいしました。

そして、「今いまでも活発かっぱつな研究けんきゅう分野ぶんやだが、受賞じゅしょうによって注目ちゅうもく度どがあがり、さらに研究けんきゅうが進展しんてんしていくと思おもう」と期待きたいしていました。

《化学かがく賞しょう 前代ぜんだい未聞みもんの事態じたいも》

受賞じゅしょう者しゃリストが事前じぜん流出りゅうしゅつ 地元じもとメディア「恥はずかしい」

一方いっぽう、ことしのノーベル化学かがく賞しょうをめぐっては受賞じゅしょう者しゃのリストが誤あやまって事前じぜんに流出りゅうしゅつするという前代ぜんだい未聞みもんの事態じたいも起おきました。

スウェーデンの公共こうきょう放送ほうそうによりますと、現地げんち時間じかんの4日にち朝あさ、発表はっぴょうのおよそ4時間じかん前まえにノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいからことしのノーベル化学かがく賞しょうの受賞じゅしょう者しゃと受賞じゅしょう内容ないようが書かかれたメールが届とどいたということです。

同おなじメールは現地げんちの複数ふくすうの新聞しんぶん社しゃなどにも送おくられていたということで、各社かくしゃは受賞じゅしょう者しゃの名前なまえを一斉いっせいに報ほうじました。

発表はっぴょう前まえにロイター通信ろいた-つうしんの取材しゅざいに応おうじた選考せんこう委員いいんの1人にんは「まだなにも決きまっていない」などとしていましたが、その後そのご、行おこなわれた選考せんこう委員いいん会かいの会見かいけんではメールと同おなじ受賞じゅしょう者しゃが発表はっぴょうされました。

公共こうきょう放送ほうそうは、こうした形かたちで受賞じゅしょう者しゃの名前なまえが事前じぜんに流出りゅうしゅつすることは過去かこに一いち度どもなかったとしているほか、現地げんちの新聞しんぶん社しゃは「非常ひじょうに残念ざんねんで恥はずかしいことだ」などと報ほうじています。

選考せんこう委員いいん会かい「非常ひじょうに遺憾いかん」原因げんいんは不明ふめい

ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは、ノーベル化学かがく賞しょうの受賞じゅしょう者しゃの名前なまえや受賞じゅしょう内容ないようが誤あやまって事前じぜんに流出りゅうしゅつしたことについて、記者きしゃ会見かいけんで「非常ひじょうに遺憾いかんでこのような事ことが起おこってしまったことを深ふかく反省はんせいしている」と述のべました。

そして「原因げんいん不明ふめいだが、報道ほうどう資料しりょうが送おくられてしまった。けさ、実際じっさいに何なにが起おこったのかを突き止つきとめようとしていたが、現時点げんじてんで原因げんいんはわかっていない」としています。

さらに記者きしゃから報道ほうどう資料しりょうが送おくられたのは、受賞じゅしょう者しゃを決きめる会議かいぎの2時間じかん前まえだったと指摘してきされると「会議かいぎは単たんなる形式けいしき的てきなものではなく、選考せんこう委員いいん会かい全体ぜんたいで受賞じゅしょう者しゃを決きめている。けさもそうだった。情報じょうほうは非常ひじょうに早はやい段階だんかいで出でてしまったが、決定けっていするまではなにも決きまっていない」と説明せつめいしました。

その上うえで「重要じゅうようなことは、この事態じたいが受賞じゅしょう者しゃを選えらぶ上うえで影響えいきょうを及およぼさなかったことだ」と強調きょうちょうしました。

一方いっぽう、ノーベル化学かがく賞しょうに選えらばれた3人にんのうちの1人にん、バウェンディ教授きょうじゅは、記者きしゃ会見かいけんで公式こうしき発表はっぴょうの前まえに問い合といあわせや知しらせがあったかと記者きしゃから問とわれると「知しらなかった。スウェーデン王立おうりつ科学かがくアカデミーの連絡れんらくで起おきた。私わたしは熟睡じゅくすいしていた」と話はなしていました。

ことしの発表はっぴょう日程にっていは

ノーベル賞しょうは、ダイナマイトを発明はつめいしたスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言ゆいごんに基もとづいて、「人類じんるいに最大さいだいの貢献こうけんをもたらした人々ひとびと」に贈おくるとされています。

ことしの受賞じゅしょう者しゃの発表はっぴょうは

▽2日にちが生理学せいりがく・医学いがく賞しょう

▽3日にちが物理ぶつり学賞がくしょう

▽4日にちが化学かがく賞しょう

▽5日にちが文学ぶんがく賞しょう

▽6日にちが平和へいわ賞しょう

▽9日にちが経済けいざい学賞がくしょうとなっています。

日本人にっぽんじんの受賞じゅしょうはこれまでアメリカ国籍こくせきを取得しゅとくした人ひとを含ふくめて28人にんですが、このうち2000年ねん以降いこうに受賞じゅしょうした20人にんはすべて、生理学せいりがく・医学いがく賞しょう、物理ぶつり学賞がくしょう、化学かがく賞しょうの自然しぜん科学かがく系けいの3賞しょうで、この期間きかんではアメリカに次つぐ2番目ばんめの多おおさとなっています。

一方いっぽう、文学ぶんがく賞しょうは1994年ねんの大江おおえ健三郎けんざぶろうさん、平和へいわ賞しょうは1974年ねんの佐藤さとう栄作えいさく元もと総理そうり大臣だいじん以来いらい受賞じゅしょうがなく、経済けいざい学賞がくしょうを受賞じゅしょうした人ひとはいません。