埼玉県虐待禁止条例の一部改正案は、県議会の最大会派自民党県議団が、子どもが放置されることにより危険な状況に置かれることを防ごうと、先週、県議会に提出しました。
改正案では、小学3年生以下の子どもを家などに残したまま保護者などが外出することを禁止するとともに、4年生から6年生については禁止ではなく努力義務としています。
これについて、自民党県議団の田村琢実 団長は、10日午後さいたま市内で記者会見し、改正案を取り下げることを明らかにしました。
その理由について田村団長は「私のことば足らずで県民はもとより全国的に不安と心配の声が広がり、多くの県民、団体などからさまざまな意見をもらった。改正案は現状と乖離があるとは考えていないが、私の説明不足によって乖離を生んでしまい、理解を得られる状況ではないと判断した。県民に心からお詫びする」と述べました。
改正案をめぐって県議団は、これまでの県議会での説明などで、子どもを家などに残したまま保護者などが外出するといった放置は「虐待」にあたり、▽子どもたちだけの自宅での留守番▽子どもたちだけでの登下校も該当するとしてきました。
これに対して、子育て中の人からは子どもの安全のためには必要だという声もある一方、厳しすぎるなどと反対意見が相次ぎました。
また、埼玉県には10日午前10時までに873件の意見が寄せられ、このうち改正案に、
▽反対意見が871件、
▽賛成意見が2件とほぼすべてが反対意見となっています。
さらに、さいたま市PTA協議会は、改正案に反対するオンラインの署名活動を行っていて、10日午後2時までに2万7000人以上の署名が集まるなど改正案に反対の声が相次いでいました。
埼玉弁護士会 尾崎康弁護士 “人の自由制限には慎重な検討必要”
埼玉弁護士会の会長で、子どもの権利を守る活動や子育てに悩む保護者の支援に携わってきた尾崎康弁護士は、条例の一部改正案が取り下げられることになったことについて「虐待防止のためとはいえ人の自由を制限するには慎重な検討が必要であって、今後、同じような議案を考えていくのであれば、丁寧な聞き取り調査や実態の把握、検証や議論が必要になるのではないか」と話していました。