【手記しゅき全文ぜんぶん】大だい規模きぼな院内いんない感染かんせん 経験けいけんした医師いしら3人にんが語かたったこと

看護かんご師し「仲間なかまを戦地せんちに送り出おくりだしているような気持きもちに」

患者かんじゃさん109名めい、職員しょくいん83名めいもの感染かんせん者しゃを出だし、原はら疾患しっかんで闘病とうびょう中ちゅうの患者かんじゃさん43名めいが亡なくなられました。亡なくなられた患者かんじゃさんのお荷物にもつから、これまでの生活せいかつや大切たいせつになさっていたもの、ご家族かぞくの思おもいなどが感じ取かんじとられ、私わたしたち職員しょくいんだけが見送みおくる中なかでの旅立たびだちになってしまったことを、ご本人ほんにんはもちろん、ご家族かぞくの皆様みなさまにもおわびしながら手てを合あわせる日々ひびでした。

感染かんせんの拡大かくだいが判明はんめいした当初とうしょは、患者かんじゃさんが次々つぎつぎと発熱はつねつするだけでなく、日に日ひにひにスタッフにも発熱はつねつ者しゃが増ふえ、ＰＣＲ検査けんさの結果けっかが病院びょういんに届とどく20時じ頃ごろから、患者かんじゃさんのベッド移動いどうやスタッフの勤務きんむ調整ちょうせいに追おわれていました。なかなか正体しょうたいがつかめない未知みちのウイルスへの恐怖きょうふに、泣なきながら防護ぼうご服ふくを着きるスタッフもいました。防護ぼうご服ふくの背中せなかに名前なまえを書かいてあげながら、仲間なかまを戦地せんちに送り出おくりだしているような気持きもちになりました。

家族かぞくがいる私わたしも、自分じぶんに何なにかあったときにどうするかを家族かぞくに伝つたえました。幼おさない子供こどもを、遠とおくから眺ながめるだけで、抱だきしめることができなかったスタッフ、食事しょくじを作つくるために一旦いったんは帰宅きたくしても、できるだけ接触せっしょくしないようにして、ホテルに寝泊ねとまりするひとり親おやのスタッフもいました。家族かぞくに反対はんたいされて退職たいしょくを希望きぼうするスタッフも出でてきましたので、様々さまざまな事情じじょうを抱かかえながら、永寿えいじゅが好すきで働はたらき続つづけてくれるこの人ひとたちを何なんとかして守まもらなければ、今いまの業務ぎょうむを統みつるけていくことはできないと強つよく感かんじました。

4月つき4日にち、「頑張がんばれ、永寿えいじゅ病院びょういん 地元じもと有志ゆうし一同いちどう」の横断幕おうだんまくが目めに入はいり、「まだ私わたしたちはここにいてもいいんだ」と思おもえました。涙なみだを拭ふきながら非常口ひじょうぐちを開あけたのを覚おぼえています。支ささえて下くださった地元じもとの皆様みなさまには、本当ほんとうに感謝かんしゃしかありません。

私わたしたちは、今回こんかいのウイルス感染かんせん症しょうで多おおくのことを学まなびました。人ひとの本質ほんしつは、困難こんなんな状況じょうきょうに直面ちょくめんするとよりあらわになることを実感じっかんしました。困難こんなんな状況じょうきょうであるからこそ、思おもいやりのある行動こうどうや、人ひとを優やさしく包つつむような言葉ことばを宝物ほうもつのように感かんじました。育児いくじ休業きゅうぎょう中ちゅうのスタッフが「メディアで医療いりょう従事じゅうじ者しゃが感謝かんしゃされていますが、私わたしはまだ何なにもできていない」と話はなしてくれたときは、「その気持きもちこそが宝物ほうもつですよ」と答こたえました。

少すこし前まえに、東京とうきょう都と看護かんご協会きょうかいから、院内いんない感染かんせんが起おきた他た院いんへの看護かんご師しの派遣はけんを依頼いらいされました。感染かんせんが拡大かくだいした頃ころの自分じぶんたちを思い出おもいだし、何なんとかしてあげたいところでしたが、精神せいしん科か病棟びょうとうへの派遣はけんなので、無理むりには頼たのめないなと思おもっていました。しかし、4人にんの看護かんご師しが志願しがんして1週間しゅうかんの救援きゅうえんに参加さんかしてくれました。先週せんしゅうこちらに戻もどってきて、「お役やくに立たてるところがありましたので、大変たいへんでしたが行おこなって良よかったです」と報告ほうこくしてくれました。

これまで支ささえて下くださった地域ちいきの皆様みなさまのため、支ささえてくれた家族かぞくやスタッフのため、地域ちいきの中核ちゅうかく病院びょういんとしての機能きのうを再生さいせいさせていかなければなりません。私わたしたちはまだその途上とじょうにいますが、何なによりも安心あんしんして医療いりょうが受うけられる場ばを提供ていきょうすることが重要じゅうようであると考かんがえています。地域ちいきの皆様みなさま、関連かんれんする医療いりょう機関きかんの皆様みなさまにおかれましては、今後こんごとも、より一層いっそうのご指導しどうとご支援しえんをお願おねがいいたします。

内科ないか医師いし「死しぬかもしれない 子こども達たちを頼たのむ」

私わたしは永寿えいじゅ総合そうごう病院びょういんに医師いしとして勤務きんむしております。動どう務つとむ中ちゅうにコロナウイルス感染かんせん症しょうにり患りかんしましたが、入院にゅういん治療ちりょうにて回復かいふくし業務ぎょうむを再開さいかいしております。

私わたしの場合ばあい、高熱こうねつと全身ぜんしんけん怠けんたい感かんで発症はっしょうし、数すう日にち後ごに強つよい乾咳からせきと呼吸こきゅう困難こんなんが出現しゅつげんしました。当時とうじ、当とう院いんでもコロナウイルス感染かんせん者しゃの受け入うけいれを始はじめておりましたので、スタッフを含ふくめて感染かんせん対策たいさくには細心さいしんの注意ちゅういを払はらっておりました。

しかし、元々もともとの病気びょうきで入院にゅういんされた方ほうがいつの間いつのまにかコロナウイルス感染かんせん症しょうを合併がっぺいされるという状況じょうきょうが出現しゅつげんし、これは我々われわれ医療いりょう従事じゅうじ者しゃでも予測よそく困難こんなんな事態じたいでした。私わたしは、自みずからの発熱はつねつを認みとめた際さいに、症状しょうじょうの強つよさからまず間違まちがいなくコロナウイルス感染かんせん症しょうにり患りかんしただろうと思おもいましたが、いつどこで感染かんせんしたかが分わからないことに慄然りつぜんとしました。

入院にゅういん後ご、安静あんせいにしていても呼吸こきゅうが苦くるしくなり、症状しょうじょうの強つよさと酸素さんそ数値すうちの悪わるさから死しを覚悟かくご致いたしました。家族かぞくとの面会めんかいはできず、妻つまには携帯けいたい電話でんわで「死しぬかもしれない、子こども達たちを宜よろしく頼たのむ」と伝つたえました。妻つまは大変たいへんなショックを受うけただろうと思おもいますが、とにかく諦あきらめずに治療ちりょうを受うけるよう励はげましてくれました。

呼吸こきゅう不全ふぜんはさらに悪化あっかし、人工じんこう呼吸こきゅう管理かんりを必要ひつようとしましたが、それでも改善かいぜんが得えられず、ＥＣＭＯ（体外たいがい式しき人工じんこう肺はい）を導入どうにゅうすることになりました。人工じんこう呼吸こきゅう器き使用しよう中ちゅうは鎮静ちんせい剤ざいが使つかわれますので意識いしきはありませんが、病状びょうじょうが改善かいぜんして人工じんこう呼吸こきゅう器きが外はずれ、意識いしきが回復かいふくした際さいには、生いきていることが不思議ふしぎでした。

入院にゅういん期間きかんは3週間しゅうかん以上いじょうにおよび、退院たいいん後ごは、筋力きんりょくの低下ていかとコロナウイルス感染かんせんによる肺はい障害しょうがいから、日常にちじょう生活せいかつを送おくれるようになるまで数すう週間しゅうかんのリハビリテーションを必要ひつようとしました。思おもうように体からだが動うごかず歯はがゆい日々ひびが続つづきましたが、当とう院いんへ通院つういん・入院にゅういんされている方ほうとそのご家族かぞく、そして共ともに医療いりょうに従事じゅうじする仲間なかまがきっと私わたしの復帰ふっきを待まってくれているという思おもいから、頑張がんばることができました。

現在げんざいは体力たいりょくが回復かいふくし、業務ぎょうむを再開さいかいしております。当とう院いんでの新型しんがたコロナウイルスの院内いんない感染かんせんにより、入院にゅういんされていた多おおくの方ほうに感染かんせんが発生はっせいし、多大ただいなご迷惑めいわくとご心配しんぱいをおかけしたことを大変たいへん申し訳もうしわけなく思おもっております。また、同どう感染かんせんによりお亡なくなりになった方ほうには、心こころよりご冥福めいふくをお祈おいのりいたします。

外来がいらい・入院にゅういんで担当たんとうしております患者かんじゃ様さまは、主治医しゅじいが突然とつぜん不在ふざいとなったことにより、大変たいへんな不安ふあんを感かんじられたことと思おもいます。当とう院いんは、通常つうじょうの診療しんりょうを取り戻とりもどすまでに、まだまだ時間じかんを必要ひつようとしておりますが、一いち日にちも早はやく安心あんしんして医療いりょうを受うけていただくことができるよう尽力じんりょくいたします。

血液けつえき内科ないか医師いし「事態じたいの重大じゅうだいさ その場ばに座り込すわりこんでしまった」

3月つき23日にちに院内いんない感染かんせんが明あきらかになり、3月つき25日にちに2名めいの同僚どうりょうが、微熱びねつがあるとのことで自宅じたく待機たいきとなり、後日ごじつにＰＣＲ陽性ようせいしかも肺炎はいえん発症はっしょうで長期ちょうき離脱りだつとなりました。当初とうしょは5階かい病棟びょうとうのみの集団しゅうだん感染かんせんと考かんがえていましたが、4月つき上旬じょうじゅんには8階かいの無菌むきん室しつにまで広ひろがっていたことが判明はんめいし、その時ときは事態じたいの重大じゅうだいさにその場ばに座り込すわりこんでしまったことを思い出おもいだします。

とは言いえ、未み感染かんせんの方ほうを含ふくめ50人にんを超こえる診療しんりょう科かの患者かんじゃ様さまの命いのちを守まもるべく、研修けんしゅう医いともども、少すくない人数にんずうで日々ひび防護ぼうご服ふくに身みを包つつみ、回診かいしんに当にあたる日々ひびが1カ月かげつ以上いじょう続つづきました。また、休診きゅうしんにより通院つういん困難こんなんとなった患者かんじゃ様さまへの連絡れんらくにも明け暮あけくれていました。

当とう院いんの患者かんじゃ層そうの特徴とくちょうとしては、大学だいがく病院びょういんなど高度こうど医療いりょう機関きかんから依頼いらいされ、転院てんいんとなった治療ちりょう歴れきの長ながい、高度こうどに免疫めんえき機能きのうが低下ていかした高齢こうれい者しゃが多おおく、アビガンやその他そのたの良よいと思おもわれる治療ちりょう薬やくなどを投入とうにゅうするも効果こうかに乏とぼしく、残念ざんねんながら最終さいしゅう的てきに血液けつえき内科ないかだけで23名めいの患者かんじゃ様さまがお亡なくなりになりました。

血液けつえき内科ないか専門医せんもんいが圧倒的あっとうてきに少すくない城東じょうとう地区ちくにおいて、深ふかい反省はんせいを込こめて、二度にどと院内いんない感染かんせんを繰り返くりかえさない体制たいせいを整ととのえつつ、患者かんじゃ様さまに安心あんしんして当とう院いんでの血液けつえき疾患しっかんの治療ちりょうを受うけていただけるよう、一層いっそうの努力どりょくをして参まいる所存しょぞんです。