感染かんせんした透析とうせき患者かんじゃの個室こしつ治療ちりょうに必要ひつような装置そうち 病院びょういんの4分ぶんの1で不足ふそく

人工じんこう透析とうせきを受うけている患者かんじゃが感染かんせんした場合ばあい、透析とうせき治療ちりょうを続つづける際さいの課題かだいについて、日本にっぽん透析とうせき医い会かいなどは先月せんげつ、全国ぜんこくの医療いりょう機関きかんを対象たいしょうにアンケートを行おこないました。

治療ちりょうは、ほかの患者かんじゃへの感染かんせんを防ふせぐために個室こしつで行おこなうことが求もとめられ、多おおくの場合ばあい、持ち運もちはこびができる「出張しゅっちょう透析とうせき装置そうち」と呼よばれる特殊とくしゅな装置そうちを使つかいますが、感染かんせんした患者かんじゃを受け入うけいれた319の病院びょういんのうち、およそ4分ぶんの1の79の施設しせつは、この装置そうちが不足ふそくしていると答こたえました。

また、感染かんせんの再さい拡大かくだいに備そなえるために必要ひつような台数だいすうを聞きいたところ、合あわせて少すくなくとも118人にん分ぶんが足たりないことがわかったとしています。

一方いっぽうで、装置そうちはおよそ500万まん円えんと高価こうかなため、新あらたに購入こうにゅうを決きめた施設しせつは25施設しせつにとどまっていて、患者かんじゃを守まもる対策たいさくに課題かだいがあることが明あきらかになりました。

日本にっぽん透析とうせき医い会かいで対策たいさくにあたるワーキンググループの菊地きくち勘かん委員いいん長ちょうは「東京とうきょう都内とないでは、装置そうちの不足ふそくを理由りゆうに患者かんじゃは入院にゅういんを断ことわられたケースもあった。感染かんせんの再さい拡大かくだいに備そなえ、より多おおくの患者かんじゃを受うけられる体制たいせいを作つくることが重要じゅうようだ」と話はなしていて、国くにに支援しえんを求もとめたいとしています。

感染かんせんした透析とうせき患者かんじゃの死亡しぼう率りつ 4倍ばい以上いじょう

人工じんこう透析とうせきを受うけている患者かんじゃは、新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんすると重症じゅうしょう化かしやすいとされ、日本にっぽん透析とうせき医い会かいと日本にっぽん透析とうせき医い学会がっかいの調査ちょうさによりますと、感染かんせんした125人にんのうち、少すくなくとも22人にんが亡なくなったということで、死亡しぼう率りつは感染かんせん者しゃ全体ぜんたいのおよそ4％より、4倍ばい以上いじょう高たかい17.6％に上のぼっています。

死亡しぼう率りつを年代ねんだい別べつに見みると、

▽40代だい以下いかでは亡なくなった人ひとはいませんが、

▽50代だいでは5.6％、

▽60代だいでは11.5％、

▽70代だいが29.7％、

▽80代だい以上いじょうは26.9％に上のぼりました。

また、

▽重症じゅうしょう化かし、人工じんこう心肺しんぱい装置そうち「ＥＣＭＯ」を使つかった治療ちりょうが必要ひつようだったのは3人にん、

▽人工じんこう呼吸こきゅう装置そうちが必要ひつようだったのは19人にん、

▽酸素さんそ投与とうよが必要ひつようだったのは49人にんだということです。

こうした患者かんじゃの治療ちりょうを行おこなった、関東かんとう労災ろうさい病院びょういんの矢尾やお淳あつし腎臓じんぞう内科ないか副ふく部長ぶちょうは、「入院にゅういん当初とうしょは、酸素さんそ吸入きゅうにゅうのみの対応たいおうだったが、すぐに呼吸こきゅう状態じょうたいが悪化あっかし、翌日よくじつには人工じんこう呼吸こきゅう器きが必要ひつようになった」と話はなしていて、症状しょうじょうが急速きゅうそくに悪化あっかすることがあるとしています。

そのうえで、「患者かんじゃの多おおくは、高齢こうれいで糖尿とうにょう病びょうなどの持病じびょうも抱かかえているため、重症じゅうしょう化かのリスクが高たかいうえ、個室こしつで透析とうせき治療ちりょうを続つづける環境かんきょうを作つくる必要ひつようがあるので一般いっぱんの医療いりょう機関きかんにとって、受け入うけいれはかなり難むずかしい」と話はなしています。

苦慮くりょする一般いっぱんの病院びょういん

人工じんこう透析とうせきを行おこなう施設しせつでは大だい部屋へやに装置そうちやベッドが、密みつに配置はいちされていることが多おおく、患者かんじゃはこうした環境かんきょうで1回かいに4時間じかんから5時間じかん、週しゅうに3回かい程度ていど治療ちりょうを受うける必要ひつようがあるため、院内いんない感染かんせんのリスクがあるとされています。

実際じっさいに、感染かんせんが拡大かくだいしていたことし4月つき、神戸こうべ市しの中央ちゅうおう市民しみん病院びょういんなどでは感染かんせんしていたことを知しらないまま人工じんこう透析とうせきを受うけていた患者かんじゃから別べつの患者かんじゃや医療いりょうスタッフに感染かんせんが広ひろがりました。

このため、人工じんこう透析とうせきを行おこなう医療いりょう機関きかんでは、徹底てっていした院内いんない感染かんせん対策たいさくをとる必要ひつようがあり、対応たいおうに苦慮くりょしています。

東京とうきょう都内とないにある総合そうごう病院びょういんでは、ことし4月つきから5月つきにかけて、感染かんせんが相次あいつぐなか、都とからの要請ようせいを受うけ、人工じんこう透析とうせきを受うけている患者かんじゃ数すう人にんを受け入うけいれました。

患者かんじゃはいずれも、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんによる症状しょうじょうは軽症けいしょうでしたが、病院びょういんには十分じゅうぶんな設備せつびがないため、大だい部屋へやの透析とうせき室しつで治療ちりょうを行おこなわざるを得えず、エレベーター1台だいを感染かんせんした人ひと専用せんようにするなど、移動いどうの動どう線せんを分わけたり、治療ちりょうを行おこなう時間じかんもほかの患者かんじゃと重かさならないようにしました。

さらに、症状しょうじょうが出でている患者かんじゃには、大だい部屋へやの中なかに、空気くうきを外そとに漏もらさない陰かげ圧室しつのようにできる特殊とくしゅなテントを入いれ、その中なかで人工じんこう透析とうせきを受うけてもらったということです。

そのうえで、マスクや防護ぼうご服ふく、それに消毒しょうどくなどを徹底てっていした結果けっか、これまでに院内いんない感染かんせんは起おきていませんが、患者かんじゃが重症じゅうしょうの場合ばあいは、せきなどで細こまかい飛ひまつが出でる可能かのう性せいが高たかく感染かんせん予防よぼうの観点かんてんから、個室こしつでないと受け入うけいれが難むずかしいとしています。

この病院びょういんで感染かんせん対策たいさくを担当たんとうする医師いしは、「せきをしたり、たんを吸引きゅういんしたりすると、細こまかい飛ひまつが出でるので、そういった症状しょうじょうが出でている患者かんじゃは受うけられないという方針ほうしんで対応たいおうしてきた。ほかの患者かんじゃや職員しょくいんへの感染かんせんには最もっとも注意ちゅういした」と話はなしていました。

中核ちゅうかく病院びょういんでも装置そうちは不足ふそく

東京とうきょう 新宿しんじゅく区くにある国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンター病院びょういんは、国くにの感染かんせん症しょう治療ちりょうの中核ちゅうかくを担になう「特定とくてい感染かんせん症しょう指定してい医療いりょう機関きかん」で、これまでに重症じゅうしょう患者かんじゃを中心ちゅうしんに新型しんがたコロナウイルスの患者かんじゃ、およそ200人にんの治療ちりょうを行おこなってきました。

このうち、もともと人工じんこう透析とうせきを受うけていたのは1人にんで病院びょういんでは持ち運もちはこびができる「出張しゅっちょう透析とうせき装置そうち」を使つかって、個室こしつで対応たいおうしました。

装置そうちは高たかさ1メートル余あまり、重おもさ80キロほどで、人工じんこう透析とうせきで必要ひつような水みずをろ過ろかする機能きのうもありますが、1台だいおよそ500万まん円えんと高価こうかで、使つかう場所ばしょで大量たいりょうに給水きゅうすいや排水はいすいする設備せつびが必要ひつようなこともあり、2台だいしかないということです。

入院にゅういんした患者かんじゃの中なかには、腎臓じんぞう病びょうではなかったのに新型しんがたコロナウイルスへの感染かんせんをきっかけに急性きゅうせい腎じん不全ふぜんとなり、新あらたに人工じんこう透析とうせきが必要ひつようになったケースもあり、病院びょういんでは、装置そうちの充実じゅうじつがさらに必要ひつようだとしています。

日にちノ下しも文彦ふみひこ腎臓じんぞう内科ないか診療しんりょう科か長ちょうは「いつ、どの患者かんじゃが重症じゅうしょう化かするか全まったく予測よそくがつかないので、装置そうちは備そなえておく必要ひつようがある。しかし、感染かんせん症しょうの流行りゅうこう期き以外いがいにはあまり使つかわれないこともあり、どの病院びょういんも台数だいすうに余裕よゆうがない。感染かんせんの再さい拡大かくだいに備そなえて、国くになどが支援しえんしてほしい」と話はなしています。