
労働組合では、下請け会社だけでは対応が難しいとして、ドライバーと直接の契約関係はないものの、委託元の「アマゾンジャパン」にも実態の把握と待遇の改善を求めるということです。
支援する弁護士によりますと、「アマゾン」の荷物を運ぶフリーランスのドライバーが労働組合を結成したのは初めてだということです。
ドライバーの50代の男性は「フリーランスの契約ですが、運ぶ荷物の数を自分で決めることはできません。働く環境を改善してほしい」と話していました。
ドライバーと契約を結ぶ下請け会社は、NHKの取材に対して、いずれも「現時点ではコメントできない」としています。
フリーランスになれば、働く日や時間を自分で選ぶことができ、2人の子どもと過ごす時間を確保できると考え、正社員の時よりも収入は減少してもかまわないと考えたと話します。 男性によりますと、働き始めたおととし1月ごろは、報酬は荷物1個当たり170円で、一日に配る荷物は70個ほどで午後8時頃には帰宅できていたといいます。 しかし、半年ほどたったころ、契約を結ぶ下請け会社から報酬を荷物1個当たりから1日1万8000円の契約に変更してほしいと相談があり、応じたといいます。 その後、荷物の数は増え続け、現在は一日に200個近い荷物を配らなくてはいけないため連日、13時間勤務の状況が続いているといいます。 荷物をどれだけ運んでも報酬は変わらないため、ガソリン代などの経費を差し引くと、手取りの収入を1時間当たりに換算すると最低賃金を下回るといいます。 転職をしようと思いましたが、ほとんど貯蓄がないうえ、失業手当を受け取ることができないため、簡単に次の仕事を見つけることができないと話します。 男性は、「1人だけでは待遇の改善を求めることは難しいですが、労働組合を結成すれば、それもできるかもしれないと考えました。同じように苦しんでいるフリーランスのドライバーはいると思うので、組合への参加を呼びかけたいです」と話していました。
ドライバーから「荷物が多すぎて、運転席から車の後方がみえないことがあり事故の危険を感じている」、「一日のうちに配らないといけない荷物は、およそ200個もあり、早く配り終えないといけないという思いからトイレにすら行くことができない」などという声が出されました。 38歳の男性は、「拘束時間も長くなり、フリーランスの自由な働き方ではありません。疲労で休みの日は何もできません」と話していました。 労働組合の代表をつとめる男性は、「1人で会社に話し合いを求めても、聞いてもらうことはできません。安定して働き続けることができる仕事になるようにしたいと思います」と話していました。
このため、労働団体の「連合」と、労働組合の「全国ユニオン」がフリーランスとして働くドライバーを対象に、無料で相談を受け付ける電話相談を今月26日の午前10時から午後8時まで行います。 電話番号は「050-5808-9835」です。
「フリーランス」は、正社員やアルバイトなどと違い、企業や団体に所属せず自由に契約を結ぶ働き方で、内閣官房の調査では、おととしの時点でおよそ462万人に上るとされています。 企業と雇用関係にはないため、業務の指揮や命令は受けず、独立した個人の事業主とみなされます。 労働時間の規制や、最低賃金の適用などを受ける労働基準法や最低賃金法などの対象ではありません。 一方で、労働基準法では雇用契約を結んで働く正社員やアルバイトなどの「労働者」について、企業などに使用され賃金を支払われる人と定義し、業務の指揮命令を受けるなどの要件を定めています。 これに対して労働組合法では「労働者」について、「賃金などに近い収入で生活する者」と定められ、労働基準法よりも「労働者」と認められる範囲は広いと一般的に解釈されています。 フリーランスとして働く人の業務の専門性が必ずしも高くない場合は、弱い立場になることも少なくなく、個人で改善を求めても難しいとして労働組合を結成する動きが出ています。 専門家などによりますと、フリーランスが労働組合を結成し、団体交渉を申し込んでも、「労働者ではない」などとして企業が拒んだため、労働委員会が労働組合法上の労働者にあたるかどうかなどの審理を行うケースも出ています。
大手楽器メーカーの子会社が運営する英語教室で、講師として働く清水ひとみさん(57)は、4年前に10人あまりの講師とともに労働組合を結成しました。 毎月の報酬は担当する生徒の数などによって決められていましたが、授業のカリキュラムや教材は会社がすべて決めていてマニュアル通りに教える必要があったといいます。 また、研修会への参加も求められましたが報酬はなかったといいます。 会社の指揮のもとで働くなど、実態は雇用契約と同じだとして、労働組合は会社側に委任契約から雇用契約に見直すことなどを求めました。 清水さんは、「会社ときちんと話をして実態をわかってもらい、お互いが納得していい方向に行きたいという思いが強かったです」と話しています。 清水さんたちは、子どもたちに英語を教えるという仕事のやりがいを訴え、講師が安心して働けることは授業内容の充実につながると伝えました。 労使で20回以上話し合いをした結果、会社はおととし9月に一部の見直しを決めました。 講師は、勤務の実態や本人の希望に応じてフリーランスか雇用契約のいずれかを選択して働き続けることができるようになり、清水さんは去年7月から雇用契約で働くことを選びました。 雇用契約になったことで有給休暇を取得でき、仕事でけがなどをした時に労災の対象になったことなどから一定の安心感を得られたといいます。 また新たに講師として働く人は全員、雇用契約を結ぶことになりました。 「ヤマハ英語講師ユニオン」の清水ひとみ執行委員長は、「個人事業主が労働組合を結成できると会社と話し合う場ができると思います。やっぱり働く人がいての会社なので、個人事業主であっても会社には働く人の方向をきちんと見て判断してほしい」と話していました。 会社や労働組合によりますと、現在は英語講師として働くおよそ800人のうち、80人ほどが雇用契約を結んでいるといいます。 フリーランスとして働く講師も、研修や会議への参加には新たに報酬が支払われるようになったほか、子どもたちの発表会などの拘束時間が長くなる場合には報酬が上乗せされるなど待遇が改善されたといいます。
沼田教授は、「フリーランスとして働く人の中には、特定の企業としか契約を結ぶことができず、経済的に依存状態にあるため、仕事の依頼を断ったら収入自体が途絶えてしまうケースがあり、なかなか1人では声を上げられない状況になっている。とくにプラットホームを通じて働いていると同じように働く人が互いに悩みについてコミュニケーションをとることが難しいので労働組合や団体を作るということは自然な流れだと思う」と指摘します。 そのうえで、「フリーランスについてこれまでは1人の経営者として契約を結んでいるので低い報酬や長時間労働、業務の安全性などは個人の責任の問題として捉えられてきた。しかし、そうではなくて自由な働き方とされるフリーランスが広がる中で、その課題や制度上あいまいな部分にどのような保護が必要なのかも含めて議論を喚起するという点で、大きな意義があると思う」と話しています。
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