両首脳は、ことし4月にも南部 フロリダ州で会談し、北朝鮮に対して完全な非核化などを求めていく方針を確認し、トランプ大統領は、米朝首脳会談で拉致問題の解決を訴える考えを表明しました。
ただ先週、トランプ大統領は北朝鮮に対し、「最大限の圧力ということばはもう使いたくない」と述べるなど、融和的な姿勢も見せていて、譲歩を引き出せるのか危ぶむ声も出ています。
また、トランプ大統領は北朝鮮のキム・ヨンチョル朝鮮労働党副委員長と面会した際、人権問題については協議しなかったと明らかにし、米朝首脳会談で実際に拉致問題が提起されるのか不安視する声もあがっています。
このため、今回の日米首脳会談で、トランプ大統領が非核化に向けて圧力を維持する方針を確認するのかや、拉致問題を提起することを改めて確約するのか注目されます。
拉致問題解決につながるか危ぶむ声も
日本政府は、米朝首脳会談の開催が核・ミサイル問題に加えて、拉致問題の解決につながることを強く期待しています。
特に拉致問題をめぐって安倍総理大臣は、アメリカのトランプ大統領に対し重要性を繰り返し訴えてきました。
これに対してトランプ大統領は去年9月、国連総会の演説で拉致被害者の横田めぐみさんに言及しました。さらに去年11月に日本を就任後初めて訪れた際には拉致被害者の家族と面会し、その後の記者会見で「この問題に共に取り組み、何ができるか考えていく」と述べ、日本に協力する考えを示しました。
そして、ことし4月に南部フロリダ州で安倍総理大臣と会談した際、トランプ大統領は、米朝首脳会談で北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長に対し拉致問題の解決を求める考えを表明しました。
またホワイトハウスの高官は、横田めぐみさんの弟の拓也さんが先月、アメリカを訪れた際に面会し、米朝首脳会談ですべての被害者の帰国を迫ってほしいという訴えに耳を傾けました。
ただトランプ大統領は、今月1日にホワイトハウスで北朝鮮のキム・ヨンチョル朝鮮労働党副委員長と面会した際、人権問題については協議しなかったと明らかにしました。この時、トランプ大統領は記者団に対し、米朝首脳会談では人権問題を協議する可能性があり「おそらくするだろう。詳しくするかもしれない」とも述べていますが、日本では実際に拉致問題が提起されるのか不安視する声も上がりました。
このためトランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題の解決を強く訴えるのか、そしてキム委員長がどのような反応をするのかが、日本にとっては非核化と並んで重大な関心事項となっています。
しかし「拉致問題は解決済み」としてきた北朝鮮の出方は見通せません。
さらに日本にとっては北朝鮮の短距離や中距離の弾道ミサイルが安全保障上の深刻な脅威ですが、ポンペイオ国務長官は、米朝首脳会談で協議するのは「アメリカにとっての核の脅威だ」と述べています。トランプ政権にとっては核弾頭とアメリカに到達するICBM=大陸間弾道ミサイルの問題が最優先事項だと考えていることがうかがえます。
このため日本政府は、北朝鮮が保有するすべての大量破壊兵器や、あらゆる射程の弾道ミサイルの完全で検証可能かつ不可逆的な方法による廃棄の実現が重要だと繰り返し訴えていて、北朝鮮が大量破壊兵器や弾道ミサイルを完全に廃棄するまで圧力を維持すべきだと主張しています。
ところがトランプ大統領は「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」と述べるなど、融和的な姿勢も見せていて、北朝鮮から譲歩を引き出せるのか危ぶむ声も出ています。
日米首脳会談では貿易の問題も
今回の日米首脳会談では、来週シンガポールで行われる予定の米朝首脳会談への対応に加えて、貿易の問題でも意見が交わされる見通しです。
トランプ政権はことし3月、安全保障上の脅威を理由に、鉄鋼製品などに高い関税を課す輸入制限措置を発動し、日本もこの措置の対象になっています。
トランプ大統領は、ことし4月の日米首脳会談のあとの会見で、「両国で新たな合意ができれば、将来のある時点で対象から除外できるだろう」と述べ、日本を除外するには貿易赤字の削減に向けた具体的な成果が欠かせないという考えを示していました。
さらにトランプ政権は先月、輸入車などが自国の自動車産業に損害を与えていないか、調査を始めることを明らかにし、関税を最高で25%に引き上げることを検討していると伝えられています。
日本の自動車メーカーにとって、アメリカは最大の輸出先であることから、この措置が発動されれば、経営への影響は極めて大きく、日本政府は慎重な対応を求めています。
ただ、これまでトランプ大統領は、日本の自動車市場は閉鎖的だとして、アメリカからの輸入拡大を強く求めてきただけに、今回の日米首脳会談で貿易の問題についてどのような発言をするかが注目されます。
米専門家 意見すり合わせる重要な機会
日米首脳会談について、アメリカ国防総省で東アジア政策担当の上級顧問を務めたカーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員はNHKのインタビューに対し、「北朝鮮に焦点を当てる会談になるだろう」と述べ、北朝鮮への対応をめぐって意見をすり合わせる重要な機会になるという認識を示しました。
そして、米朝首脳会談を前にトランプ大統領が北朝鮮に融和的な姿勢を見せていることを念頭に「トランプ大統領は最大限の圧力をかける方針をゆるめるおそれがある。非核化という最終的な目標に向けて、譲歩しないようにするため安倍総理大臣のような友人から意見を聞くのはトランプ大統領にとって重要なことだ」と指摘しました。
また、日本人の拉致問題について「トランプ大統領は非常に同情している。日本政府はよく説明しており、トランプ大統領が北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長と会談する際、言及すると思う」と述べ、米朝首脳会談で提起されるという見方を示しました。
一方で、日本にとって安全保障上の脅威である短距離や中距離の弾道ミサイルについては「トランプ大統領の優先課題ではないと思う。アメリカは核と、アメリカを攻撃できるICBM=大陸間弾道ミサイルに焦点を当てている」と指摘しました。