逮捕・起訴された全員がのちに無罪となったこの事件で、1度は死刑判決を受けた元被告の男性が、えん罪の被害を繰り返さないでほしいと思いを語りました。
「松川事件」は、昭和24年8月、福島市松川町の旧国鉄東北線で、線路のレールが何者かによって外され、通過した列車が脱線・転覆した事件で、乗務員3人が死亡しました。
労働組合の幹部など20人が逮捕・起訴され、1審では全員が死刑や無期懲役など有罪判決を受けましたが、事件から14年後、全員の無罪が確定し、戦後最大級のえん罪事件とも呼ばれています。
今月で事件から70年となり、21日、元被告の1人で1審で死刑判決を受けた阿部市次(95)さんが記者会見しました。
この中で阿部さんは、「14年間という長い歳月を裁判などに明け暮れ、むだにしてしまった。私の家族も学校に通う時に石をぶつけられるなど、長年苦しい生活を強いられた」と、当時を振り返りました。
警察の取り調べに対しては、「私の言い分を何も聞いてくれなかった。現在も全国的にえん罪事件が発生していることは適切な捜査と公正な裁判が徹底されていないことの表れで、松川事件を教訓にしてほしい」と述べ、えん罪の被害を繰り返さないよう訴えました。事件から70年が経過し、20人いた元被告は、阿部さんを含め2人になりました。
事件の風化が課題になる中、福島大学では事件に関する資料を収集するなど、教訓を伝える取り組みも行われています。
阿部さんは「松川事件を研究している人は数多くいるので、協力して、後世まで語り継いでいってほしい」と話しました。