天皇てんのう陛下へいか退位たいいまで１いちか月かげつ 表明ひょうめいされたお気持きもちとは

そして、高齢こうれいによる体力たいりょくの低下ていかを感かんじるようになったと話はなし、「次第しだいに進すすむ身体しんたいの衰おとろえを考慮こうりょする時とき、これまでのように、全身ぜんしん全霊ぜんれいをもって象徴しょうちょうの務つとめを果はたしていくことが、難むずかしくなるのではないかと案あんじています」と胸むねの内うちを語かたられました。

続つづいて、天皇てんのうとしてのこれまでの歩あゆみを「天皇てんのうとして大切たいせつな、国民こくみんを思おもい、国民こくみんのために祈いのるという務つとめを、人々ひとびとへの深ふかい信頼しんらいと敬愛けいあいをもってなし得えたことは、幸しあわせなことでした」と振り返ふりかえられました。

このあと、天皇てんのう陛下へいかは、天皇てんのうの高齢こうれい化かに伴ともなう対応たいおうについて言及げんきゅうし、公務こうむを限かぎりなく減へらしていくことには無理むりがあるという考かんがえを示しめされました。

また、天皇てんのうの行為こういを代行だいこうする摂政せっしょうを置おいた場合ばあい、天皇てんのうが、求もとめられる務つとめを十分じゅうぶんに果はたせぬまま、生涯しょうがい、天皇てんのうであり続つづけることになるとして、否定ひてい的てきな考かんがえをあらわされました。

天皇てんのう陛下へいかが表明ひょうめいされたお気持きもちは、退位たいいの意向いこうが強つよくにじむもので、最後さいごに、「象徴しょうちょう天皇てんのうの務つとめが常つねに途切とぎれることなく、安定あんてい的てきに続つづいていくことをひとえに念ねんじる」として国民こくみんに理解りかいを求もとめられました。

宮内庁くないちょうは、お気持きもち表明ひょうめいの直後ちょくごに、天皇てんのう陛下へいかのおことばについて「憲法けんぽう上じょうの立場たちばを踏ふまえ個人こじんとしての心情しんじょうを述のべられた」と説明せつめいしました。

その後そのご、「内容ないようについては、天皇てんのう陛下へいかの憲法けんぽう上じょうの立場たちばを踏ふまえたご発言はつげんとする必要ひつようがあるので、内閣ないかく官房かんぼうと協議きょうぎをした」と説明せつめいし、お気持きもちの表明ひょうめいという天皇てんのう陛下へいかの行為こういについては、「公的こうてきな行為こういという位置いちづけで、最終さいしゅう的てきには内閣ないかくが責任せきにんを持もつ性格せいかくのもの」という認識にんしきを示しめしています。

また、天皇てんのう陛下へいかも、平成へいせい28年ねん12月つきの記者きしゃ会見かいけんで、「天皇てんのうとしてのみずからの歩あゆみを振り返ふりかえり、この先さきの在り方ありかた、務つとめについて、ここ数すう年ねん考かんがえてきたことを内閣ないかくとも相談そうだんしながら表明ひょうめいしました」と述のべられています。

お気持きもち表明ひょうめい後ごの天皇てんのう陛下へいか

天皇てんのう陛下へいかは、３さん年ねん前まえの８月はちがつに退位たいいの意向いこうが強つよくにじんだお気持きもちを表明ひょうめいしたあとも、変かわりなく公務こうむに臨のぞまれてきました。

お気持きもちの表明ひょうめいから１いち週間しゅうかん後ごの８月はちがつ15日にちには、皇后こうごうさまとともに全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきに臨のぞみ、戦後せんご70年ねんの平成へいせい27年ねんに続つづいて「深ふかい反省はんせい」ということばを盛り込もりこんでおことばを述のべられました。

秋あきには、国体こくたいの開会かいかい式しき出席しゅっせきのため訪おとずれた岩手いわて県けんで、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいからの復興ふっこう状況じょうきょうを視察しさつし、仮設かせつ住宅じゅうたくなどで暮くらす被災ひさい者しゃにことばをかけられました。おととしの２月にがつ末まつからは皇后こうごうさまとともに国賓こくひんとしてベトナムを訪おとずれ、国際こくさい親善しんぜんに努つとめられました。

そして６月ろくがつには、天皇てんのう陛下へいかの退位たいいに向むけた特例とくれい法ほうが成立せいりつしました。

その後そのご、10月つきには、九州きゅうしゅう北部ほくぶ豪雨ごううで大おおきな被害ひがいを受うけた福岡ふくおか県けんと大分おおいた県けんを訪おとずれ、被災ひさい者しゃを見舞みまわれました。

11月つきには鹿児島かごしま県けんの島々しまじまを訪おとずれ、平成へいせい27年ねんの爆発ばくはつ的てきな噴火ふんかで避難ひなんを余儀よぎなくされた口永良部島くちえらぶじまの住民じゅうみんたちと懇談こんだんしたほか、初はじめて訪おとずれた与論よろん島とうと沖永良部おきのえらぶ島とうでは、島しまの住民じゅうみんや子こどもたちと交流こうりゅうされました。

12月つきには、三権さんけんの長ちょうや皇族こうぞくなどからなる皇室こうしつ会議かいぎや閣議かくぎを経へて、天皇てんのう陛下へいかの退位たいいと皇太子こうたいしさまの即位そくいの期日きじつが決きまりました。

去年きょねん３月さんがつには、11回かい目めとなる沖縄おきなわ訪問ほうもんに臨のぞみ、戦没せんぼつ者しゃを慰霊いれいして遺族いぞくにことばをかけられました。

６月ろくがつには、「全国ぜんこく植樹しょくじゅ祭さい」に出席しゅっせきするため福島ふくしま県けんを訪おとずれ、震災しんさいによる津波つなみで大おおきな被害ひがいを受うけた南みなみ相馬そうま市しの会場かいじょうで、将来しょうらい、海岸かいがん防災ぼうさい林りんとなる木々きぎを植うえられました。

そして８月はちがつ15日にち、退位たいいを前まえに最後さいごに臨のぞんだ全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきでは、結むすびの一文いちぶんに「戦後せんごの長ながきにわたる平和へいわな歳月さいげつに思おもいを致いたしつつ」という一節いっせつを新あらたに盛り込もりこんでおことばを述のべられました。

翌よく９月くがつには、２に度どにわたって西日本にしにほん豪雨ごううの被災ひさい地ちを訪問ほうもんし、11月つきには、震度しんど７ななの揺ゆれを観測かんそくした北海道ほっかいどう厚真あつま町まちを訪おとずれ、被災ひさいした人ひとたちを見舞みまわれました。

天皇てんのうとして最後さいごとなった去年きょねん12月つきの誕生たんじょう日びには、参賀さんがのため８はち万まん2800人にん余あまりが皇居こうきょを訪おとずれました。

参賀さんがが今いまの形かたちになった昭和しょうわ44年ねん以降いこう、最もっとも多おおい人出ひとでとなりました。

また、ことし１月いちがつ２に日にちの新年しんねん一般いっぱん参賀さんがでも平成へいせいに入はいって最もっとも多おおい15万まん4000人にん余あまりが訪おとずれ、天皇てんのう陛下へいかは国内外こくないがいの人々ひとびとの幸しあわせを祈いのるおことばを述のべられました。

２月にがつ24日にちには、在位ざいい30年ねんを記念きねんする政府せいふ主催しゅさいの式典しきてんに皇后こうごうさまとともに出席しゅっせきし、去年きょねんの誕生たんじょう日びに続つづいて、平和へいわを願ねがう気持きもちや国民こくみんへの感謝かんしゃの思おもいを述のべられました。

お気持きもち表明ひょうめい後ご 天皇てんのう陛下へいかのおことば

３さん年ねん前まえの８月はちがつに退位たいいの意向いこうが強つよくにじむお気持きもちを表明ひょうめいして以来いらい、天皇てんのう陛下へいかは、象徴しょうちょうとしての務つとめやみずからの歩あゆみについてたびたび述のべられてきました。

お気持きもちを表明ひょうめいしたビデオメッセージでは、「私わたしはこれまで天皇てんのうの務つとめとして、何なによりもまず国民こくみんの安寧あんねいと幸しあわせを祈いのることを大切たいせつに考かんがえて来きましたが、同時どうじに事ことにあたっては、時ときとして人々ひとびとの傍かたわらに立たち、その声こえに耳みみを傾かたむけ、思おもいに寄り添よりそうことも大切たいせつなことと考かんがえて来きました」と述のべ、象徴しょうちょうの務つとめを果はたす上うえで、一貫いっかんして大切たいせつにしてきた考かんがえをあらわされました。

そして、天皇てんのうとして最後さいごとなった去年きょねん12月つきの誕生たんじょう日びの記者きしゃ会見かいけんでは、こうした考かんがえのもとに実践じっせんしてきた務つとめを１ひとつずつ振り返ふりかえられました。

このうち、先さきの大戦たいせんで激はげしい地上ちじょう戦せんが行おこなわれ、長ながく心こころを寄よせてきた沖縄おきなわについては、皇太子こうたいし時代じだいから皇后こうごうさまとともに11回かいの訪問ほうもんを重かさねたことを振り返ふりかえったうえで、「沖縄おきなわの人々ひとびとが耐たえ続つづけた犠牲ぎせいに心こころを寄よせていくとの私わたしどもの思おもいは、これからも変かわることはありません」と話はなされました。

また、「慰霊いれいの旅たび」に出でかけるなど、一貫いっかんして戦争せんそうの歴史れきしに向き合むきあわれてきたことについては、「先さきの大戦たいせんで多おおくの人命じんめいが失うしなわれ、また、わが国わがくにの戦後せんごの平和へいわと繁栄はんえいが、このような多おおくの犠牲ぎせいと国民こくみんのたゆみない努力どりょくによって築きずかれたものであることを忘わすれず、戦後せんご生うまれの人々ひとびとにもこのことを正ただしく伝つたえていくことが大切たいせつであると思おもってきました。平成へいせいが戦争せんそうのない時代じだいとして終おわろうとしていることに、心こころから安堵あんど（あんど）しています」と時折ときおり、声こえを震ふるわせながら述のべられました。

そして、ひときわ声こえを震ふるわせながら、「天皇てんのうとしての旅たびを終おえようとしている今いま、私わたしはこれまで、象徴しょうちょうとしての私わたしの立場たちばを受け入うけいれ、私わたしを支ささえ続つづけてくれた多おおくの国民こくみんに衷心ちゅうしんより感謝かんしゃするとともに、みずからも国民こくみんの一いち人にんであった皇后こうごうが、私わたしの人生じんせいの旅たびに加くわわり、60年ねんという長ながい年月としつき、皇室こうしつと国民こくみんの双方そうほうへの献身けんしんを、真心まごころを持もって果はたしてきたことを、心こころからねぎらいたく思おもいます」と述のべられました。

記者きしゃ会見かいけんは天皇てんのう陛下へいかの思おもいがこれまでにないほど強つよくあらわれたものとなりました。

天皇てんのう陛下へいかは、２月にがつ24日にちに開ひらかれた在位ざいい30年ねんを記念きねんする政府せいふ主催しゅさいの式典しきてんで「私わたしがこれまで果はたすべき務つとめを果はたしてこられたのは、その統合とうごうの象徴しょうちょうであることに、誇ほこりと喜よろこびを持もつことのできるこの国くにの人々ひとびとの存在そんざいと、過去かこから今いまに至いたる長ながい年月としつきに、日本人にっぽんじんがつくり上つくりあげてきた、この国くにの持もつ民度みんどのおかげでした」と述のべ、あらためて国民こくみんへの感謝かんしゃの思おもいをあらわされました。

そして「憲法けんぽうで定さだめられた象徴しょうちょうとしての天皇てんのう像ぞうを模索もさくする道みちは果はてしなく遠とおく、これから先さき、私わたしを継ついでいく人ひとたちが、次つぎの時代じだい、さらに次つぎの時代じだいと象徴しょうちょうのあるべき姿すがたを求もとめ、先立さきだつこの時代じだいの象徴しょうちょう像ぞうを補おぎない続つづけていってくれることを願ねがっています」と述のべられました。