イギリス外務省は当初、拿捕されたタンカーはイギリス船籍とリベリア船籍の合わせて2隻だと発表しましたが、このうちリベリア船籍のタンカーはすでに解放され、航行を再開したということです。
公共放送のBBCによりますと、イギリス政府は緊急会合を開いて対応を協議し、イギリスの船舶に対して当面、ホルムズ海峡周辺に近づかないよう勧告を行ったということです。
イギリスのハント外相は「タンカーの拿捕は決して容認できない。この状況がすぐに解決されないなら深刻な結果を招くことになる」としたうえで、外交手段を通じて事態の解決にあたる方針を示しました。
今回のイラン側の動きは今月4日、イギリス領ジブラルタルの当局がEU=ヨーロッパ連合の制裁措置に反してシリアに原油を運ぼうとしたとしてイランのタンカーを拿捕したことへの対抗措置とみられています。
ホルムズ海峡周辺ではアメリカとイランとの間ですでに緊張の高い状態が続いていて、イギリスのタンカーが拿捕されたことで情勢が複雑化することも懸念されます。
英の船会社“連絡が取れない状態”
イギリスの船会社ノーザン・マリングループは声明を発表し、日本時間の20日午前0時ごろ、自社が運航するタンカー「ステナ・インペロ」がホルムズ海峡を通過中にどこの所属かわからない小型船とヘリコプターの接近を受けたと明らかにしました。
このタンカーはイランの方角に向かっていて、連絡が取れない状態だということです。
会社によりますと、タンカーの乗組員は23人で、けが人などの情報は入っていないということです。
イギリス政府と連携して対応に当たっているとしています。
米大統領 英と対応協議へ
アメリカのトランプ大統領は19日、ホワイトハウスで記者団にイランがペルシャ湾のホルムズ海峡でイギリスのタンカーを拿捕したと発表したことを受けてイギリス側と今後の対応を協議する考えを明らかにしました。
そのうえで「イランについて私が言い続けてきたことが正しいことが分かるだろう。イランは単なるトラブルでしかない」と述べ、核合意を結ぶなどイランとの距離を縮めたオバマ前政権の政策を批判しました。
米軍 サウジに部隊派遣へ
中東地域を管轄するアメリカ中央軍は19日、声明で、中東のサウジアラビアに新たにアメリカ軍の部隊と装備を派遣すると発表しました。
派遣される兵士の数など詳しいことは明らかにされていませんが、アメリカのメディアは、500人規模の部隊が首都リヤド近郊にあるプリンス・スルタン空軍基地を拠点に、迎撃ミサイル「パトリオット」の運用などにあたると伝えています。
サウジアラビアにアメリカ軍の部隊が派遣されるのは2003年にアメリカ軍がサウジアラビアから全面撤退して以来です。
中央軍は声明で「この地域におけるアメリカ軍とその利益を緊急かつ確かな脅威から守るため」としており、イランを念頭に抑止力を強化するねらいがあるとみられます。
米のNSC「同盟国などと引き続き取り組む」
イランがペルシャ湾のホルムズ海峡でイギリスのタンカーを拿捕したと発表したことについてアメリカのホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議は19日、NHKに対し、「イギリスが、エスカレートするイランの暴力の標的となったのは、1週間で2度目だ。イランによる悪意ある行動からわれわれの安全や国益を守るため、同盟国などと引き続き取り組む」とするコメントを出しました。
2隻の航路
世界各国の船舶の位置情報を公開しているウェブサイト「マリン・トラフィック」によりますと、イギリス船籍の「ステナ・インペロ」は、長さ183メートル、総トン数およそ3万トンのタンカ-です。
今月19日にUAE=アラブ首長国連邦のフジャイラ港を出発し、21日にサウジアラビアのジュバイルの港に到着する予定だとしています。
タンカーがたどった航路からは、西に向かっていた「ステナ・インペロ」が、ホルムズ海峡にさしかかったところから、急に進む方角が北に変わったのがわかります。
さらに、タンカーの速度を記したグラフからは、一定の速度を保っていましたが、日本時間の午前0時20分ごろを境に、速度が急に上がったり下がったりしているのがわかります。
また、もう1隻のリベリア船籍の「メスダー」は、長さ333メートル、総トン数16万トン余りのタンカ-で、イギリスの船会社が運航しています。
ことし4月に中国の港を出発し、今月20日にサウジアラビアの港に到着する予定だとしています。
ペルシャ湾を西に進んでいた「メスダー」の航路も、急に北に変更されたほか、タンカーの速度を記したグラフからも、日本時間の午前1時ごろを境に、速度が急に落ちたことがわかります。