Actualités japonaises: ノーベル賞真鍋淑郎さん 50年以上前に“温暖化”影響を予測

ノーベル賞しょう真鍋まなべ淑郎よしろうさん 50年ねん以上いじょう前まえに“温暖おんだん化か”影響えいきょうを予測よそく

Oct 6, 2021 18:10

Furigana

ことしのノーベル物理ぶつり学賞がくしょうの受賞じゅしょう者しゃに選えらばれた真鍋まなべ淑郎よしろうさん（90）。

いまから50年ねん以上いじょう前まえに「二に酸化さんか炭素たんそが増ふえれば地球ちきゅうの気温きおんが上昇じょうしょうし。地球ちきゅう温暖おんだん化かにつながる」ということを世界せかいに先駆さきがけて発表はっぴょう。

こうした成果せいかがもとになり、地球ちきゅう温暖おんだん化かや気候きこう変動へんどうの研究けんきゅうが進すすみました。

“非常ひじょうにシンプルで本質ほんしつ突ついたモデル”

真鍋まなべさんがノーベル物理ぶつり学賞がくしょうの受賞じゅしょう者しゃに選えらばれたことを記念きねんして、東京とうきょう江東こうとう区くの日本にっぽん科学かがく未み来館らいかんでは6日にち、急きゅうきょ、真鍋まなべさんの研究けんきゅう内容ないようや功績こうせきを紹介しょうかいするトークイベントが開ひらかれました。

イベントには授業じゅぎょうの一環いっかんで訪おとずれていた中学ちゅうがく生せいなど10人にん余あまりが参加さんかし、科学かがくコミュニケーターが図ずや写真しゃしんを投影とうえいしながら真鍋まなべさんの研究けんきゅう内容ないようを説明せつめい。

「真鍋まなべさんは50年ねん以上いじょう前まえに、非常ひじょうにシンプルで本質ほんしつを突ついた気候きこうの予測よそくモデルを作つくった。こうした成果せいかによって地球ちきゅう温暖おんだん化かが人類じんるいの活動かつどうによって起おきたことが科学かがく的てきに裏付うらづけられた」と功績こうせきをたたえました。

「現代げんだいの気候きこう研究けんきゅうの基礎きそ」

ノーベルの選考せんこう委員いいん会かいは、真鍋まなべさんの受賞じゅしょう理由りゆうについて「現代げんだいの気候きこうの研究けんきゅうの基礎きそとなった」としています。

その気候きこうモデル。真鍋まなべさんは、地表ちひょう面めんが太陽たいようから受け取うけとるエネルギーから、宇宙うちゅうに逃にげていくエネルギーを差し引さしひいた「放射ほうしゃ収支しゅうし」と、空気くうきや水蒸気すいじょうきが互たがいにどう影響えいきょうし合あうか、世界せかいで初はじめて解明かいめいしたとされます。

1960年ねん当時とうじ、真鍋まなべさんはアメリカの気象きしょう局きょくで、温室おんしつ効果こうかガスが増ふえたら気候きこうがどうなるかという温暖おんだん化か問題もんだいに取り組とりくんでいたといいます。

地球ちきゅうの気候きこうは、大気たいきと海うみ、そして陸地りくちの間まで熱ねつや水蒸気すいじょうきがやりとりされ、次々つぎつぎと変化へんかが起おきる非常ひじょうに複雑ふくざつな現象げんしょうですが、真鍋まなべさんは、複雑ふくざつな関係かんけいを数式すうしき化かして、世界せかいで初はじめて大型おおがたコンピュータを使つかって予測よそくしたのです。

1967年ねんに発表はっぴょうした論文ろんぶんでは、二に酸化さんか炭素たんその濃度のうどが2倍ばいになると、地球ちきゅうの平均へいきん気温きおんがおよそ2.3度ど上あがるとしています。

真鍋まなべさんは受賞じゅしょうが決きまったあとのインタビューで「東京とうきょう大学だいがくの地球ちきゅう物理ぶつり教室きょうしつにいた当時とうじ、天気てんき予報よほうを発展はってんさせて気候きこうモデルを作つくっており、はじめは好奇こうき心しんでやっていたが、アメリカに呼よばれて、コンピューターも使つかい放題ほうだいで、全ぜん地球ちきゅう的てきな気候きこうモデルの開発かいはつを始はじめました。1960年代ねんだいのアメリカは冷戦れいせんを背景はいけいとした競争きょうそうの中なかにあって非常ひじょうに科学かがく研究けんきゅうに力ちからを入いれていて、電子でんし計算けいさん機きの導入どうにゅうも盛さかんで、アメリカに呼よばれたのも幸運こううんだったうえ、計算けいさん機きが急速きゅうそくな進歩しんぽを遂とげたというのも幸運こううんで、いろいろな幸運こううんが重かさなって今いまに来きている」と話はなしています。

またスウェーデン王立おうりつ科学かがくアカデミーは「60年ねん前まえ、コンピュータ（の処理しょり速度そくど）は、現在げんざいよりも10万まん分ぶんの1の速はやさでした。真鍋まなべさんのモデルは比較的ひかくてき単純たんじゅんなものでしたが、真鍋まなべさんはまさしく重要じゅうような特徴とくちょうをとらえていた」と評価ひょうかしています。

“大おおきな目めでみて直感ちょっかん的てきに”

真鍋まなべさんと同おなじ研究けんきゅう分野ぶんやで40年ねん近ちかくの親交しんこうがある東京とうきょう大学だいがく未来みらいビジョン研究けんきゅうセンターの住じゅう明正めいせい特とく任にん教授きょうじゅは真鍋まなべさんの研究けんきゅうについて「気象きしょうは複雑ふくざつな物理ぶつり現象げんしょうが絡み合からみあっていて細こまかく見みればキリがないが、それを大おおきな目めでみて直感ちょっかん的てきに割り切わりきって考かんがえる思考しこう力りょくとセンスが真鍋まなべさんにはあった」と評価ひょうかしました。

「気候きこうの計算けいさんのいちばん最初さいしょ」

真鍋まなべさんと同おなじ分野ぶんやの研究けんきゅう者しゃとして20年ねん以上いじょうの交流こうりゅうがある国立こくりつ環境かんきょう研究所けんきゅうじょの木本きもと昌秀まさひで理事りじ長ちょうは「真鍋まなべさんはいち早いちはやく気候きこうの計算けいさんに向むかって開発かいはつを始はじめて、気候きこうの計算けいさんのいちばん最初さいしょはすべて真鍋まなべさんのグループがやったと言いって過言かごんではない。あのときに二に酸化さんか炭素たんそを増ふやす計算けいさんをやっていなかったら、温暖おんだん化かの問題もんだいが認識にんしきされることがもっと遅おくれて　もっと手てに負おえないことになっていたかもしれない」と話はなしています。

研究けんきゅう成果せいかは身近みぢかな予報よほうにも

真鍋まなべさんの研究けんきゅう成果せいかは、温暖おんだん化かだけにとどまらず、夏なつや冬ふゆの気温きおんをはじめ、雨あめや雪ゆきの見通みとおしといった私わたしたちの暮くらしに身近みぢかな「長期ちょうき予報よほう」にも生いかされています。

真鍋まなべさんが先頭せんとうに立たって開発かいはつに取り組とりくんできたのは、気温きおんや水蒸気すいじょうきの状況じょうきょうといった「大気たいきの状態じょうたい」と、海流かいりゅうや海水温かいすいおんの変化へんかなどの「海洋かいようの状態じょうたい」の相互そうごの影響えいきょうを考慮こうりょしたうえで今後こんごを予測よそくする「大気たいき海洋かいよう結合けつごうモデル」と呼よばれるものです。

「この冬ふゆは寒さむいか」とか「ことしの梅雨つゆは長ながいか」など比較的ひかくてき長期ちょうきの天候てんこうを見通みとおす場合ばあい、地球ちきゅう規模きぼの海うみの状態じょうたいが大気たいきに影響えいきょうしたり、逆ぎゃくに、大気たいきの状態じょうたいが海うみに影響えいきょうを及およぼしたりするため、気象庁きしょうちょうの予報よほうの現場げんばでも不可欠ふかけつだといいます。

気象庁きしょうちょうは、“きょう”や“あす”といった天気てんき予報よほうではなく、「3か月かげつ予報よほう」や「寒かん候こう期き予報よほう」などの長期ちょうき予報よほうには、「大気たいき海洋かいよう結合けつごうモデル」を用もちいています。

例たとえば、10月つきから12月つきにかけての3か月かげつ予報よほうでは赤道せきどうに近ちかい、太平洋たいへいようの中部ちゅうぶや東部とうぶの海域かいいきでは平年へいねんより海水温かいすいおんが低ひくい状態じょうたいが続つづくと予想よそうされていますが、東ひがし寄よりの風かぜが吹ふいていることが影響えいきょうしていて、「大気たいき海洋かいよう結合けつごうモデル」が無なければ予報よほうできない現象げんしょうだといいます。

気象庁きしょうちょう異常いじょう気象きしょう情報じょうほうセンターの竹たけ川元かわもと章あきら所長しょちょうは「気象きしょう予報よほうの世界せかいでは当たり前あたりまえに使つかわれている真鍋まなべ先生せんせいのモデルが、私わたしたちの生活せいかつにも密接みっせつに関かかわっていることを多おおくの人ひとに知しってほしい。受賞じゅしょう決定けっていは私わたし個人こじんとしてもうれしく、真鍋まなべ先生せんせいが礎いしずえを築きずいた気象庁きしょうちょうのシステムを、これからも発展はってんさせていかなければならないと感かんじています」と話はなしていました。