日本新聞: リチウムイオン電池の発火事故夏に多発ファン付き作業服でも

モバイルバッテリーなどに使つかわれている「リチウムイオン電池でんち」の発火はっか事故じこは、夏場なつばに多おおく発生はっせいしていることがNITE（ないと）＝製品せいひん評価ひょうか技術ぎじゅつ基盤きばん機構きこうの調査ちょうさで分わかりました。電池でんちが高温こうおん環境かんきょうにさらされるためとみられ、NITEは、直射ちょくしゃ日光にっこうの当あたる場所ばしょに製品せいひんを放置ほうちしないよう注意ちゅういを呼よびかけています。

厳きびしい暑あつさの中なか、屋外おくがいで作業さぎょうする人ひとたちの熱中ねっちゅう症しょう対策たいさくとして近年きんねん利用りようが広ひろがっている“あの服ふく”も、正まさしく使つかわないと発火はっかのリスクがあるといいます。

※記事きじ後半こうはんでは、リチウムイオン電池でんちを使つかったバッテリーに異常いじょうが見みられる場合ばあいの「対処たいしょ法ほう」を動画どうがでご覧ごらんいただけます。

「リチウムイオン電池でんち」はモバイルバッテリーや、スマートフォン、パソコンなど、充電じゅうでんできるさまざまな製品せいひんに使つかわれていますが、発火はっかなどの事故じこは年々ねんねん増加ぞうかしています。

2024年ねんの1年間ねんかんにNITEに報告ほうこくされた事故じこは492件けんで、前まえの年としより77件けん増ふえてこれまでで最もっとも多おおくなりました。

去年きょねんまでの過去かこ5年間ねんかんではあわせて1860件けんの事故じこが報告ほうこくされていて、このうちおよそ85％が火災かさいにつながっています。

これを月別つきべつに調しらべたところ8月つきが228件けんで最もっとも多おおく、次ついで7月つきが212件けん、6月つきが201件けんで、気温きおんが高たかくなる夏場なつばに多発たはつしていたことが分わかりました。

車くるまの運転うんてん席せきに放置ほうちされていたモバイルバッテリーが発火はっかした事故じこや、充電じゅうでん中ちゅうの携帯けいたい型がた扇風機せんぷうきが発火はっかした事故じこなどが確認かくにんされているということです。

NITEによりますと、「リチウムイオン電池でんち」は熱ねつや衝撃しょうげきに弱よわい性質せいしつがあるため、高温こうおん環境かんきょうにさらされることで電池でんち内部ないぶの温度おんどが上昇じょうしょうし、発火はっかするリスクが高たかまるということです。

このためNITEでは、直射ちょくしゃ日光にっこうが当あたる場所ばしょや車内しゃないなどに放置ほうちしないようにすること、強つよい衝撃しょうげきを与あたえないようにすることなど、製品せいひんの使い方つかいかたに注意ちゅういするよう呼よびかけています。

去年きょねんまでの5年間ねんかん事故じこの最多さいたはモバイルバッテリー

NITEは、去年きょねんまでの5年間ねんかんの製品せいひん別べつの事故じこ発生はっせい件数けんすうを公表こうひょうしました。

それによりますと、

▽事故じこが最もっとも多おおかったのは、モバイルバッテリーの361件けん（19。

4％）で、

▽次ついで電動でんどうアシスト自転車じてんしゃが202件けん（10。

9％）、

▽充電じゅうでん式しき電動でんどう工具こうぐが171件けん（9。

2％）、

▽充電じゅうでん式しき掃除そうじ機きが157件けん（8。

4％）、

▽ノートパソコンが134件けん（7。

2％）、

▽ポータブル電源でんげんが110件けん（5。

9％）、

▽スマートフォンが102件けん（5。

5％）となっています。

リチウムイオン電池でんちが多様たような製品せいひんに使つかわれていることを反映はんえいして、「その他そのた」が623件けんと全体ぜんたいの3分ぶんの1を占しめています。

このうち40件けんは充電じゅうでん式しきの携帯けいたい型がた扇風機せんぷうきで、小型こがたのファンが付ついた作業さぎょう服ふくも「その他そのた」に含ふくまれているということです。

猛暑もうしょで注目ちゅうもく利用りよう広ひろがるあの服ふくも…

温暖おんだん化かに伴ともなって夏なつの暑あつさの厳きびしさが増ます中なかで熱中ねっちゅう症しょう対策たいさくとして注目ちゅうもくされ近年きんねん利用りようが広ひろがっている小型こがたのファンが付ついた作業さぎょう服ふくでも、リチウムイオン電池でんちが発火はっかするなどの事故じこが起おきています。

総務そうむ省しょう消防庁しょうぼうちょうによりますと、網羅もうら的てきな統計とうけいはありませんが、2018年ねん以降いこう少すくなくとも全国ぜんこくで年としに数すう件けんファン付つき作業さぎょう服ふくが原因げんいんの火災かさいが起おきています。

また、身近みぢかなところで起おきる事故じこの情報じょうほうを共有きょうゆうするため消費しょうひ者しゃ庁ちょうなどが運用うんようしている「事故じこ情報じょうほうデータバンクシステム」で調しらべてみると、ファン付つき作業さぎょう服ふくのバッテリーの発熱はつねつや発火はっかなどの事故じこが2021年ねん以降いこうで少すくなくとも20件けん報告ほうこくされていました。

このうち、去年きょねん6月つきに愛知あいち県けんで充電じゅうでん中ちゅうのファン付つきの衣類いるいのバッテリー付近ふきんから出火しゅっかして住宅じゅうたくが全焼ぜんしょうした火災かさいでは、高齢こうれいの女性じょせい1人にんが死亡しぼうしています。

SNSに”作業さぎょう服ふくが発火はっか” 誤あやまった取り扱とりあつかい原因げんいんのケースも

SNS上じょうには、「ファン付つき作業さぎょう服ふくのバッテリーが膨張ぼうちょうして充電じゅうでん中ちゅうに爆発ばくはつした」とか、「ファン付つき作業さぎょう服ふくのバッテリーの調子ちょうしが悪わるくて代替だいたい品ひんを送おくってもらったら、それが発火はっかした」などという投稿とうこうが見みられ、中なかには「ファン付つきの服ふくで作業さぎょうしていたらバッテリ－から発火はっかして背中せなかをやけどした」という投稿とうこうもありました。

一方いっぽうで、「頭あたまにきてファン付つき作業さぎょう服ふくをたたきつけたらバッテリーが爆発ばくはつした」などという誤あやまった取り扱とりあつかいが原因げんいんのケースも見みられました。

消費しょうひ者しゃ窓口まどぐちへの相談そうだんも増ふえる傾向けいこうに

東京とうきょう都との消費しょうひ者しゃ窓口まどぐちには、「電池でんち部分ぶぶんが熱あつくなっていて安全あんぜんに着きられるのか」などというファン付つき作業さぎょう服ふくに関にかんする相談そうだんが寄よせられていて、その数かずは増ふえる傾向けいこうにあります。

東京とうきょう都と消費しょうひ生活せいかつ総合そうごうセンターによりますと、ファン付つき作業さぎょう服ふくに関にかんする相談そうだんは、2020年度ねんどは2件けんでしたが、2021年度ねんどは3件けん、2022年度ねんどと2023年度ねんどはいずれも6件けんで、2024年度ねんどは12件けんでした。

高村たかむら淳子じゅんこ相談そうだん課長かちょうは、「手軽てがるに涼すずしくなれる便利べんりなものだが、ファンや充電じゅうでん池ちが付ついている普通ふつうの服ふくではないことを理解りかいし、長時間ちょうじかんの使用しようや充電じゅうでんに気きをつけたうえで着用ちゃくようしてもらいたい。

工事こうじ現場げんばなど野外やがいで作業さぎょうする人ひとが多おおく着きていると思おもうが、ファンを回まわすためのリチウムイオン電池でんちは衝撃しょうげきに弱よわいので、作業さぎょうする時ときに何なにかにぶつかって衝撃しょうげきを与あたえてしまうと事故じこにつながるので、なるべく電池でんちのところにぶつからないように注意ちゅういする必要ひつようがある。釣つりやキャンプに行いく時ときに着きる人ひともいるが、水みずにも弱よわいので、バッテリーをぬらさないよう注意ちゅういしてほしい」と話はなしていました。

NITE 発火はっか事故じこの実験じっけん動画どうがを公開こうかい注意ちゅういを呼よびかけ

リチウムイオン電池でんちは熱ねつや衝撃しょうげきに弱よわいため取り扱とりあつかいには注意ちゅういが必要ひつようで、NITEは、発火はっか事故じこの典型てんけい的てきなケースを紹介しょうかいする実験じっけん動画どうがを公開こうかいして注意ちゅういを呼よびかけています。

【携帯けいたい型がた扇風機せんぷうき】

近年きんねん使つかう人ひとが増ふえている充電じゅうでん式しきの携帯けいたい用よう扇風機せんぷうきも、バッテリー部分ぶぶんが破裂はれつしたり火ひが出でたりするなどの事故じこが相次あいついでいることから注意ちゅういが必要ひつようです。

落下らっかなどによって強つよい力ちからが加くわわると、外見がいけん上じょう問題もんだいなくても内部ないぶのバッテリーが損傷そんしょうしている場合ばあいがあり、実験じっけん動画どうがではそのまま使つかい続つづけていた携帯けいたい型がた扇風機せんぷうきがマネキンの顔かおの近ちかくで突然とつぜん破裂はれつする様子ようすが紹介しょうかいされています。

【スマートフォン】

身近みぢかなスマートフォンでは。

▽充電じゅうでんケーブルを取り付とりつけようとして誤あやまって床ゆかに落おとしたケースや、

▽靴くつひもを結むすぼうとしてしゃがんだ際さいにシャツの胸むねポケットに入いれていたスマートフォンを落おとしたケース、

▽ズボンの後うしろのポケットに入いれたまま歩あるいていて転倒てんとうしたり座すわったりして無理むりな力ちからが加くわわったケースのほか、

▽身の回みのまわりの物ものとともに布製ぬのせいの手提てさげバッグに入いれていて誤あやまってドアなどにぶつけたケースや、

▽室内しつないに置おいていたら飼い犬かいいぬがかじってしまい電池でんちが傷きずついたケースなどが紹介しょうかいされています。

【モバイルバッテリーなど】

最もっとも事故じこが多おおいモバイルバッテリーと、アウトドア用品ようひんや防災ぼうさい用品ようひんとして人気にんきが高たかまっているポータブル電源でんげん。

リコールの対象たいしょうとなっている製品せいひんと知しらずに充電じゅうでんしていて発火はっかするケースが相次あいついでいるということで、箱はこに書かかれた製品せいひん名めいや型式けいしきからリコール情報じょうほうを確認かくにんするよう呼よびかけています。

リコール情報じょうほうは、NITEのホームページなどで確認かくにんできます。

【電動でんどう自転車じてんしゃ・電動でんどう工具こうぐ】

電動でんどうアシスト自転車じてんしゃや電動でんどう工具こうぐのバッテリーについては、インターネットなどで「互換ごかん品ひん」と称しょうして販売はんばいされている非ひ純正じゅんせいのものは、純正じゅんせい品ひんと比くらべて安やすいものの安全あんぜん対策たいさくや品質ひんしつ管理かんりが不十分ふじゅうぶんで発火はっかリスクが高たかいものが潜ひそんでいるということで、最悪さいあくの場合ばあいは充電じゅうでん中ちゅうに発火はっかするケースもあるとして実験じっけん動画どうがを公開こうかいして注意ちゅういを呼よびかけています。

いずれの製品せいひんも、ほかと比くらべて極端きょくたんに安やすい物ものや販売はんばい事業じぎょう者しゃの連絡れんらく先さきが不明ふめいなものの中なかには粗悪そあく品ひんが混まざっているおそれがあるため、注意ちゅういが必要ひつようです。

炎天下えんてんかの車くるまに放置ほうちで…

また、リチウムイオン電池でんちを使つかった製品せいひんを炎天下えんてんかの車くるまのダッシュボードやトランクなどに放置ほうちしていて発火はっかする事故じこも後ごを絶たたないということで、こうしたケースの実験じっけん動画どうがも公開こうかいされています。

なぜ発火はっか？対処たいしょ法ほうは？【動画どうがも】

さまざまな製品せいひんに使つかわれているリチウムイオン電池でんちは、なぜ発火はっかするのか。

リチウムイオン電池でんちは、可燃かねん性せいの電解でんかい液えきが含ふくまれているため、使つかい続つづけて劣化れっかすると内部ないぶに可燃かねん性せいのガスがたまる場合ばあいがあります。

この時とき、製品せいひんが膨張ぼうちょうすることがあり、そうした状態じょうたいの電池でんちに強つよい衝撃しょうげきや圧力あつりょくが加くわわって内部ないぶの部品ぶひんが壊こわれたり充電じゅうでんしすぎたりすると、熱ねつが発生はっせいするなどして内部ないぶにたまっていた可燃かねん性せいのガスが発火はっかするということです。

NITEは、リチウムイオン電池でんちを使つかったバッテリーに異常いじょうが見みられる場合ばあいの対処たいしょ法ほうも動画どうがで紹介しょうかいしています。

まず、異常いじょうを感かんじたらすぐに充電じゅうでんや使用しようを中止ちゅうししてください。

そのうえで、バッテリーが膨ふくらんでいる場合ばあいは、金属きんぞく製せいのバケツに入いれて、ふたをしてアルミテープで固定こていすると、発火はっかしても延焼えんしょうを抑おさえることができます。

金属きんぞく製せいの鍋なべや土鍋どなべなど家庭かていにある物ものでも有効ゆうこうな対処たいしょができるということです。

みずから消火しょうかを試こころみる場合ばあいは、大量たいりょうの水みずをかけて火ひを消けし、できるだけ水没すいぼつさせた状態じょうたいにして消防しょうぼうに通報つうほうするよう呼よびかけています。

ただし、高温こうおんになった車くるまの中なかに放置ほうちしてしまい煙けむりや火ひが出でた場合ばあいは、急きゅうに火ひが大おおきくなるおそれがあり自分じぶんで対処たいしょするのは危険きけんなので、すぐに車くるまから離はなれて安全あんぜんを確保かくほしたうえで消防しょうぼうに通報つうほうしてほしいとしています。