駐車場には二酸化炭素を放出するタイプの消火設備が設置され操作盤は1階の駐車場出入り口付近の1か所にあります。
警視庁によりますと、通常は、操作盤の扉を開けてボタンを押すと避難を促すアナウンスが流れたあとに二酸化炭素が駐車場内に放出される仕組みになっているということです。
操作盤の近くには大型のボンベがあり、ここからパイプを通って二酸化炭素が地下に放出されます。
地下の駐車場内には操作盤はありませんが、自動火災報知器が設置され火災を感知すると操作盤のボタンを押さなくても自動で二酸化炭素が放出されることがあるということです。
住民は駐車場の1階部分で車をとめてあとは機械を操作して車を地下に収納するためふだん、地下部分に一般の人が入ることはありません。
駐車場には最大24台の車を収容することができ、15日作業員は午前8時半から天井の板およそ200枚を張り替える作業にあたっていたということです。 二酸化炭素が放出された時、地下にいた6人のうち30代の作業員だけがはしごの近くにいたためなんとか地上に脱出することができました。 ほかの作業員5人はいずれも地下の駐車場内で倒れているのが見つかり、このうち4人が亡くなってもう1人も意識不明の重体になっています。 自力で逃げた作業員の証言によりますと、現場では二酸化炭素が放出される前に避難を呼びかけるアナウンスが流れたということですが、ほかの5人は何らかの理由で逃げることができず、短時間で意識を失ったとみられています。
兵庫県のメーカーが、その様子を撮影した動画を公開しています。
二酸化炭素の放出は、消火設備が作動してから20秒以上間隔をあけなければならないと法律で定められていて、メーカーによりますと、作動させる、 通常は警告音とともに「火事です。消火剤を放出します。危険ですので避難してください」というアナウンスが流れるということです。
総務省消防庁は、二酸化炭素を放出する消火設備を建物に設置した場合、NPO法人・消防環境ネットワークが管理するデータベースに登録するよう業者に促していています。 2006年(平成18年)に始まった任意の登録制度のため、全ての設備が登録されているわけではありませんが、二酸化炭素を放出する消火設備の登録件数は2010年(平成22年)に1687件、2015年(平成27年)に2700件、2020年(令和2年)に3608件と年々増えています。
機械式の駐車場にはふだん、人が立ち入らないため、二酸化炭素を使う消火設備が設置されてきたということです。 今は、比較的安全な窒素を放出する設備を導入する施設も増えていますが、二酸化炭素の設備の方が設置のコストが低いため、今も多くの施設で設置が進んでいます。 日本消火装置工業会は「ふだんは人が立ち入らないところでも今回の事故のように危険が及ぶ可能性がある。できるだけ安全性の高い窒素を使う流れになってほしい」としています。
ことし1月には東京・港区のビルの地下駐車場で消火設備が誤作動を起こして二酸化炭素が放出され、点検中の作業員2人が死亡しました。 去年12月には名古屋市のホテルの地下駐車場で、消火設備の誤操作が原因で二酸化炭素が放出され、ホテルの従業員など11人が病院に搬送されてこのうち作業員の男性1人が死亡しました。 また、平成22年6月にも、東京・新宿区のビルの地下駐車場に設置された設備の点検中に二酸化炭素が放出されて作業員4人が酸欠になり、病院に搬送されました。 東京消防庁によりますと、同じタイプの消火設備から二酸化炭素が放出される事故やトラブルは、今回の事故を除くと都内では2016年以降の5年間であわせて6件起きていて、2人が死亡、3人がけがをしたということです。 このうち4件は、今回と同じ機械式の駐車場だということです。 また、二酸化炭素を放出するタイプの消火設備が設置されている建物は、都内だけでおよそ3500に上るとしています。
15日の事故が起きた東京・新宿区の地下駐車場には二酸化炭素を放出するタイプの消火設備がありましたが、設備から放出されたとみられる二酸化炭素が充満して、天井の張り替え作業を行っていた作業員4人が死亡しました。 このため総務省消防庁は全国の自治体と消火設備の業界団体に対し、安全対策の徹底を求める通知を出しました。 通知では二酸化炭素を放出する消火設備の近くで工事を行う際、消火設備の点検の資格を持つ人などが立ち会って安全管理を行うことや誤って消火剤が放出されないよう元栓を閉めてから工事を始めることなどを求めています。 二酸化炭素を放出する消火設備では去年12月に名古屋市で、ことし1月に東京・港区で放出事故が発生し、総務省消防庁は、このときも2度にわたって安全対策の徹底を求める通知を出していました。
その上で「消防法では、建物の所有者や防火管理者が作業員などに対し、消火設備の使い方や危険性を周知するよう定められている。同じような事故が相次いでいる現状を考えると、周知だけではなく、専門的な知識がある消防設備士などが現場に立ち会うといった対策が必要ではないか」と話していました。
消火設備が作動すると
同じタイプの消火設備 登録件数は年々増加
増えている理由は?
事故相次ぐ
消防庁 安全対策の徹底求める通知
専門家「専門知識ある消防設備士など立ち会うなど対策必要」