8日朝からは地元の消防団も加わって、山林にくすぶっている熱源や残り火の消火活動が続けられています。
三陸町越喜来の3地区の避難指示解除
2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災では、市の面積の9%にあたるおよそ2900ヘクタールが焼失しましたが、火の勢いは弱まっていて6日から新たな延焼は確認されていません。
8日の朝からは地元の消防団も加わって、再び延焼が起きないよう山林の中でくすぶっている熱源や残り火を探しながら消火活動が続けられています。
7日の火災の発生以降、初めて、大船渡湾側の一部の地区の避難指示が解除されたのに続き、大船渡市は8日午後1時に
▽三陸町越喜来の甫嶺東地区、甫嶺西地区、上甫嶺地区のあわせて141世帯、333人を対象に出している避難指示を解除しました。
大船渡市三陸町越喜来では、午後1時に防災行政無線で避難指示の一部が解除されたことが伝えられると、交通規制していた警察官が通行止めを示す看板を撤去していました。
地区につながる道路の通行止めが解除されると車に乗った人たちが次々に避難指示が解除された地区に向かっていきました。
住民「元気に帰ることができてよかった」
三陸町越喜来の避難指示が解除された地区に住む新田敏子さん(88)は家族と一緒に帰宅し「みんなで元気に帰ることができてよかった」と安どしていました。
新田さんは避難指示の解除を受けて家族4人で1週間ぶりに自宅に戻ると、電気がつくかどうかなどを確認していました。部屋の中には避難する前に出しておいたひな飾りのほか、仏壇に供えていたリンゴなどがそのままの状態で置かれていました。
新田さんは「家に帰ることができるとわかってみんなでバンザイしました。本当に嬉しかったです。焼けてしまったら何も残らないので、家が無事で安心しました。みんなで元気に帰ることができて本当によかったです」と話していました。そして仏壇に手を合わせ「痛い目にあわず助かりました。こんなこと2度とないように願っています」と報告していました。
住民「ここよりもいいところはない」
避難指示が解除された三陸町越喜来の甫嶺地区にある自宅に戻った中村静子さん(87)は「津波も火事もあったが、ここよりいいところはないので家が燃えなくてよかった」とほっとした表情を浮かべていました。
8日午後1時すぎ、中村さんは大船渡市三陸町越喜来の一部の地区に出されていた避難指示の解除を知らせる防災無線に耳をすませ、「よかった」とうなずきながら喜びをかみしめていました。このあと同じ地区の避難先の親戚に見送られ、自分で車を運転して自宅へ向かいました。
ひとり暮らしの中村さんは、3月1日に避難指示が出されるとすぐに荷物をまとめて市内の親戚の家に向かったということで、自宅に入ると机の上には当時、食べていたカレーがそのまま残っていました。
そして育てていた植物を確認すると「少し前に夫が亡くなってからは寂しくて花を眺める時間が自分の支えになっていたので、元気に生きていてくれてうれしいです」と笑顔で話していました。また、冷蔵庫を開けて、食べ物を触ったりにおいをかいだりして状態を確認していました。
中村さんは、「津波も火事もあったが、どんなに素敵なところへ行っても、ここよりもいいところはない。家が燃えなくて本当によかったです」とほっとした表情で話していました。
消防団員「ここまで火が回るとは」
三陸町越喜来の自宅に戻った男性は「火が自宅のすぐ近くまで迫り、怖いし焦った」と不安な心境を明かしました。
家族とともに避難していた南嶺東地区に住む熊谷優汰さん(27)は、一緒にいた父親にかかってきた電話で避難指示の解除を知りました。このあと避難する時に持ち出した布団や防寒着などを車に運び入れて自宅に向かい、自宅の様子を確認したところ被害はありませんでした。
消防団員として活動する熊谷さんが近所を見て回ったところ、自宅前の道路をはさんだ山の斜面は黒く焼けていて、焦げ臭いにおいがただよっていました。
熊谷さんは「家の近くギリギリまで焼けていて、いつもと異なる風景に怖さや焦りがあるし、ここまで火が回るとは思わなかった。あすは消防団員として活動して、避難生活が続く人たちが自分の家に早く戻って安心した日常を送ることができれば」と話していました。
地元の消防団も消火活動に加わる
岩手県大船渡市で続く山林火災の消火活動に、8日から再び地元の消防団が加わりました。地元の消防団は火災の発生当初、消火にあたっていましたが延焼が拡大したことに伴って活動をとりやめていました。
その後、火の勢いは弱まり、8日までの3日間は新たな延焼が確認されていないことなどから、8日からは地元の消防団が消火活動に加わっています。
このうち三陸町越喜来を拠点にする消防団の分団に所属し自身も避難生活を送っていた熊谷建汰さんは、午前8時に集合して防火服に着替えるなど消火活動に向けた準備を整えていました。
このあと窪田将浩分団長が団員に対し「急勾配な所もあり山林火災の範囲も広いので、無理をせずに柔軟に対応してほしい」と伝えていました。
そして熊谷さんなど団員15人が、避難指示が出されている三陸町綾里地区の山林火災の現場へと向かいました。熊谷さんによりますと、消防隊の指示に従って木が人の腰ほどまでに焼けた山の尾根を歩き、温度を測るなどしながら、くすぶっている熱源がないかを5時間ほどにわたって確認したということです。
消火活動に参加している熊谷建汰さんは「山林火災が出火直後に消火活動に参加したが、その後は機会がなく、もどかしい気持ちだった。ようやく家族や地域の役に立てるので、消火活動を頑張りたい」と話していました。
引き続き1340世帯3306人に避難指示
引き続き市の10%の住民にあたる1340世帯3306人を対象に避難指示が出されています。
大船渡市は8日の午前の会見で、赤崎町の7つの地区に出されている避難指示のうち蛸ノ浦地区、清水地区、永浜地区、大立地区のあわせて4つの地区について、9日以降の解除を検討していることを明らかにしました。
三陸町綾里の一部についても今後、検討していくということです。
避難指示の発表状況まとめ 8日午後1時時点
【三陸町綾里全域】
850世帯、2060人
【赤崎町の7つの地区】
(※9日以降に解除を検討)
▽蛸ノ浦地区 203世帯475人
▽清水地区 54世帯142人
▽永浜地区 50世帯125人
▽大立地区 54世帯140人
(※未定)
▽長崎地区 58世帯158人
▽外口地区 48世帯152人
▽合足地区 23世帯54人
渕上清市長「生活再建へ早急に支援行う」
岩手県大船渡市の渕上清市長は、8日午前の記者会見で「確実に鎮圧に向かっていると確認している。被災者の中には生活の再建に時間を要する方もいるが、生活環境の違いを埋めるべく早急に再建に向けた支援を行っていく」と話しました。
また、被災した人には漁業者が多いとしたうえで、事業全般の再建について「経済的支援や雇用維持にかかる支援を国や県に訴えていく。事業を続ける意欲を失うことのないように、サポートを続けていきたい」と述べました。