既存きそん薬やくの効果こうかの確認かくにん 安全あんぜん性せいや開発かいはつ時間じかん短縮たんしゅくで意義いぎ

このうち、日本にっぽん国内こくないからは、免疫めんえきの働はたらきを抑おさえるステロイドを吸入きゅうにゅうするタイプのぜんそく治療ちりょう薬やく、「オルベスコ」、一般いっぱん名めい「シクレソニド」という薬くすりを患者かんじゃに投与とうよしたあと、症状しょうじょうが改善かいぜんしたケースが報告ほうこくされていて、この薬くすりに効果こうかがある可能かのう性せいを突き止つきとめた国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの松山まつやま州しゅう徳とく室長しつちょうがＮＨＫえぬえいちけいのインタビューに応おうじました。

松山まつやま室長しつちょうによりますと、国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょでは、コロナウイルスの一種いっしゅによる感染かんせん症しょうで、中東ちゅうとうなどで広ひろがったＭＥＲＳに効きく薬くすりを探さがそうと、２に年ねん前まえからおよそ1200種類しゅるいの薬くすりの候補こうほ物質ぶっしつをウイルスに感染かんせんさせた細胞さいぼうに投与とうよする実験じっけんを進すすめ、「オルベスコ」が効果こうかがある可能かのう性せいを見みいだしていたということです。

同様どうようの実験じっけんを新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんさせた細胞さいぼうでも行おこなったところ、細胞さいぼうの中なかのウイルスは、100分ぶんの１いち程度ていどにまで減へったということで、ウイルスの増殖ぞうしょくを抑おさえることを実験じっけんで確認かくにんできたとしています。

松山まつやま室長しつちょうは、ウイルスの増殖ぞうしょくを抑おさえると同時どうじに炎症えんしょうを抑おさえる効果こうかがあると見みています。

松山まつやま室長しつちょうは「ＭＥＲＳはいまだに中東ちゅうとうで感染かんせんが続つづいているうえ、コロナウイルスの病気びょうきはほかにもあるので研究けんきゅうを続つづけていた。薬くすりの開発かいはつや安全あんぜん性せいの確認かくにんには時間じかんがかかるため、新あらたに開発かいはつすると間に合まにあわない。人ひとに投与とうよしても安全あんぜんだと分わかっている薬くすりは、薬くすりの適用てきようを変かえるだけなので医師いしも使つかいやすい」と述のべ、新あらたな感染かんせん症しょうに対にたいして既存きそんの薬くすりの効果こうかを確たしかめる意義いぎを強調きょうちょうしました。

一方いっぽう、国くにの研究けんきゅう班はんではオルベスコを含ふくめた複数ふくすうの既存きそんの薬くすりが、新型しんがたコロナウイルスに効果こうかがあるかどうか、患者かんじゃに投与とうよした際さいのデータを集あつめて分析ぶんせきすることにしています。

研究けんきゅう班はんの班長はんちょうで愛知あいち医科いか大学だいがくの森島もりしま恒雄つねお客員きゃくいん教授きょうじゅは「薬くすりを使つかった治療ちりょう法ほうが決きまってくれば、肺炎はいえんの重症じゅうしょう化かを防ふせぎ、集中しゅうちゅう治療ちりょう、医療いりょうの崩壊ほうかいを防ふせぐことができる。今月こんげつ終おわりから来月らいげつ初はじめごろにはある程度あるていど、薬くすりのデータがそろってきて、きちんと評価ひょうかできると考かんがえている」と話はなしています。

ぜんそく薬やく投与とうよした医師いしは期待きたい

神奈川かながわ県けん松田まつだ町まちにある神奈川かながわ県立けんりつ足柄上あしがらかみ病院びょういんでは、これまでに新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんした患者かんじゃ、10人にんに対にたいして治療ちりょうを行おこなってきました。

このうち、先月せんげつクルーズ船せん「ダイヤモンド・プリンセス」で感染かんせんした患者かんじゃ３さん人にんは、いずれも高齢こうれいで、搬送はんそうされてきた当初とうしょから肺炎はいえんになっているなど症状しょうじょうが重おもく、ベッドから起き上おきあがるのもやっとという状態じょうたいで、中国ちゅうごくなどで投与とうよの報告ほうこくがあったエイズの発症はっしょうを抑おさえる薬くすりを試ためしても症状しょうじょうは改善かいぜんしなかったということです。

こうした中なかで、病院びょういんで患者かんじゃを診みていた総合そうごう診療しんりょう科かの岩渕いわぶち敬介けいすけ医長いちょうは、先月せんげつ中旬ちゅうじゅんに開ひらかれた新型しんがたコロナウイルスへの治療ちりょうを検討けんとうする会議かいぎに出席しゅっせきし、国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょからぜんそく薬やくの「オルベスコ」が効きく可能かのう性せいがあるという報告ほうこくを聞きき、これまでに長年ながねん使つかわれている薬くすりで副作用ふくさようが少すくないことから患者かんじゃの同意どういを得えたうえで投与とうよすることを決きめました。

投与とうよしたあとはいずれの患者かんじゃも２に日にちほどで肺炎はいえんなどの症状しょうじょうが改善かいぜんし、中なかには日課にっかの体操たいそうができるほどに体調たいちょうが戻もどる人ひともいたということです。

岩渕いわぶち医長いちょうは「当初とうしょは、とんでもない感染かんせん症しょうを診みているのではないかと感かんじ、必死ひっしに診療しんりょうしていた。本当ほんとうにこの薬くすりが効きいたのか分わからないが、つらい戦たたかいだったので救すくわれたと思おもった。人工じんこう呼吸こきゅう器きなどを必要ひつようとする患者かんじゃは普通ふつうの病院びょういんではなかなか診みることができないので、こうした薬くすりを早期そうきに使つかって重症じゅうしょう化かが防ふせげるのであれば、非常ひじょうに意味いみがあると思おもう」と話はなしています。