自民党の
河井案里議員の
陣営による
選挙違反事件で、
広島地方検察庁は
案里議員の
秘書ら
2人を
公職選挙法違反の
罪で
起訴するとともに、
議員本人の
当選を
無効とする
連座制の
適用に
向けて
迅速な
審理を
求める「
百日裁判」を
申し立てました。
起訴されたのは、
河井案里議員の
公設第二秘書、
立道浩被告(54)と、
夫の
河井克行前法務大臣の
政策秘書、
高谷真介被告(43)です。
2人は去年7月の参議院選挙で、陣営の14人のウグイス嬢に法律の規定を超える報酬を支払ったとして、公職選挙法違反の運動員買収の罪に問われています。
一方、ともに逮捕された71歳の元陣営幹部は処分保留で釈放されました。
検察はそれぞれの権限や役割などを調べた結果、議員本人の当選を無効とする連座制の対象に立道秘書が該当すると判断し、起訴から100日以内に判決を出すよう求める「百日裁判」を24日、広島地方裁判所に申し立てました。
立道秘書は当時、選挙カーの運行計画を作成するなどしていて、検察は連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」と判断したということです。
関係者によりますと、捜査段階の調べに対し立道秘書は容疑を認めていて、今後の刑事裁判で禁錮以上の刑が確定し、検察が連座制の適用を求める訴えを起こして認められれば、案里議員の当選は無効となります。
一方、検察は河井議員夫妻から任意で複数回、事情を聴いていて、引き続き陣営の選挙運動の実態解明を進めるものとみられます。
河井夫妻がコメント「おわび申し上げる」
自民党の河井案里参議院議員は、コメントを出し「当該選挙において多くの方々や後援会関係者の皆様など、本当にたくさんのご支援をいただいたにもかかわらず、このような事態となりましたことを心からおわび申し上げます」としています。
そのうえで「これまで検察庁の捜査に対しては真摯(しんし)に協力してまいりましたが私自身、検察庁における捜査内容の詳細については把握できておりませんので、今後は、刑事裁判の行方を注視してまいりたいと存じます」としています。
また、河井克行 前法務大臣もコメントを出し、「本件の事実関係や刑事責任につきましては、今後の裁判において明らかになるものと存じますが、昨年来、国民の皆様、地元支援者の方々をはじめとする関係者の方々に多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますこと、また、政策担当秘書が起訴される事態に至りましたことを深くおわび申し上げます」としています。
立道秘書の役割は
関係者によりますと、立道浩秘書は参議院選挙が公示される前の去年5月ごろから陣営に入り、選挙カーの運行計画の作成やウグイス嬢への報酬の支払いなどを担当していました。
河井案里議員が平成21年の広島県知事選挙に立候補した際、選挙カーの運転手だったのが立道秘書で、道路事情に詳しかったことなどから、去年の選挙でも陣営に入るよう誘われたということです。
車の走行ルートや街頭演説の場所、それにウグイス嬢の弁当の手配なども任されていたということです。
選挙当時、秘書ではありませんでしたが、案里議員の当選を受けて、投開票日の8日後に公設第二秘書に採用されました。
連座制対象の「組織的選挙運動管理者」とは
連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」は選挙運動の計画立案や運動員の指揮・監督にあたる人物が想定されています。
平成6年の公職選挙法の改正で、連座制の適用範囲を拡大するため、新たに候補者の秘書とともに、対象に加わりました。
連座制に向けたこれまでの裁判の判決では、「組織的選挙運動管理者」に該当する人物として、
▽ビラ配りや街頭演説などの計画を立てて調整を行う、いわば司令塔の役割をする者、
▽運動員への指揮・監督をするいわば前線のリーダーの役割をする者、
▽運動員の弁当や車の手配、個人演説会場の確保を取りしきるなど、選挙運動の後方支援を管理する者などがあげられています。
「百日裁判」過去の事例
公職選挙法では連座制の適用が想定される選挙違反事件について、裁判所が起訴から30日以内に初公判を開き、100日以内に判決を出すよう努めなければならないと規定しています。
裁判が長引くことで当選した候補者の任期中に結論が出ず、連座制の効果が失われるのを避けるのが目的です。
国会議員の連座制適用に向けた裁判では、平成24年の衆議院選挙で鹿児島県の選挙区で当選した議員の親族に対し、起訴されてから92日目に1審の判決が言い渡されました。
判決が出る前に議員は辞職し、その後、1審の有罪判決が確定しました。
検察は連座制の適用を求める行政訴訟を起こし、提訴からおよそ2か月後に、同じ選挙区から5年間、立候補を禁止する判決が確定しました。
また、平成21年の衆議院選挙で北海道の選挙区で当選した議員の陣営幹部が、罪に問われたケースでは、起訴されてから98日目に1審の判決が言い渡されました。
その後、最高裁まで争われましたが、陣営幹部の有罪が確定するまでの期間は起訴からおよそ10か月で、通常の裁判より大幅に短縮されました。
有罪判決の確定を受けて、検察は連座制の適用を求める行政訴訟を起こし、提訴からおよそ3か月後に同じ選挙区での5年間の立候補禁止の判決が確定しました。
菅官房長官「本人が必要な説明を」
菅官房長官は午後の記者会見で、「個別事件の検察当局の事件処理について、コメントすることは差し控えたい」と述べました。
その上で、「政治家個人は常日頃から、みずからの行動について説明責任を果たす必要があると考えており、ご本人が必要な説明をされるものだと思う」と述べました。