1か月間の旅行者数としては、1964年の統計開始以来、初めて1万人を下回った4月よりもさらに減って過去最少を更新しました。旅行者の減少は8か月連続で減少幅は、ことし3月は93%、4月と5月は99.9%と記録的な落ち込みが続いています。
国や地域別では、アメリカが50人、中国とインドが30人、韓国とフランスが20人にとどまりました。
台湾やタイ、ドイツ、カナダやオーストラリアなど幅広い国と地域で10人を下回りました。
外国人旅行者数の統計には、観光客以外にも留学生や技能実習生も含まれていて、今回の場合は、もともと日本に住んでいた外国人が再入国したケースがほとんどとみられます。
減少の背景には、日本政府が感染拡大を防ぐために現在、世界111の国と地域を対象に、外国人の入国を拒否するなど、引き続き、厳しい水際対策をとっていることがあります。
政府は感染状況などを考慮して、タイ、ベトナムなどの4か国と制限の緩和に向けた協議を行っていますが、旅行者数の回復には、時間がかかる見込みです。
旅行会社 バスツアー再開に向け準備
外国人旅行者の回復が当面見込めないなか、旅行会社では19日から、都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で緩和されることを受けて、まずは、日本人の国内旅行の再開に向けた準備を進めています。
バスツアーなどを取り扱う旅行会社のクラブツーリズムは、感染拡大を受けて、4月出発分からツアーの販売を中止していましたが、都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で緩和されるのに合わせて、18日から日帰りのバスツアーを中心に、販売を再開する計画です。販売再開にあたり、会社では、バスツアーで客に協力を求める感染防止対策について説明する動画を制作しています。
動画では、社員が添乗員と参加者にふんして、密集を避けるために使用する座席を窓際に限定することや、添乗員と客の接触を減らすためこれまで添乗員が行っていた荷物の積み込みを客自身が行うことなどを説明しています。
また、会社ではツアーで立ち寄る土産物店や観光施設などの感染防止対策を確認する作業を進めています。
千葉県の南房総市をめぐるツアーを企画している担当者は、昼食で利用する飲食店を訪れ、参加者が1メートル以上の距離を取って着席できるかメジャーで測ったり、食事を大皿ではなく1人ずつ別々の皿で提供できるかを確認したりしていました。
クラブツーリズムの西堀翼さんは「観光業界にとっては厳しい状況だったので、ツアーの販売が再開できることは、大きな一歩だと思う。感染防止対策も取っているので、多くの人に観光を楽しんでほしい」と話していました。
都心のホテル 日本人のビジネス利用取り込みへ
これまで外国人の観光需要に頼っていた東京都心のホテルでは、日本人のビジネス利用を取り込むことで苦境を乗り越えようとしています。
去年8月にオープンした東京 新宿区のホテルは、壁一面に葛飾北斎の浮世絵などを描いた客室が人気を集め、宿泊客の8割を外国人が占めていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で外国人旅行者が激減し、4月と先月の客室稼働率は、15%にまで落ち込みました。
このため、出張などで東京を訪れる日本人の利用を増やそうと、ヘアブラシや体を洗うタオルを無くし備品を最小限にするなどして価格を通常の4分の1に抑えた格安プランの販売を始めました。また、企業の間で広がるテレワークの需要を取り込もうと2月下旬から客室を時間貸しするプランを始めました。
4時間の利用だと4000円、8時間から11時間で6000円で、先月までの2か月間で100件を超える利用があったということです。
それでも1か月の売り上げは去年のピーク時の10分の1程度だということで、ホテルでは3つのフロアの電源を常に落としたり、清掃作業を外部に委託するのをやめて自分たちで行うなどして苦境を乗り越えようとしています。
「ラ・ジェント・ホテル新宿歌舞伎町」の小嶺憲司支配人は「これまで外国の方に頼っているところがあったと思う。ことしいっぱいは、外国人旅行者が戻ってくるのは厳しいと思うので、できることに注力したい」と話していました。