EU=
ヨーロッパ連合から
離脱する
条件を
定めた
協定案がイギリスの
議会で
大差で
否決されたことを
受けて、メイ
首相は
与野党から
意見を
聞いたうえで
EUと
改めて協議する
方針です。
ただ、
事態打開の
道筋は
見えておらず、
EUとの
取り決めがないまま
離脱する「
合意なき
離脱」が
次第に
現実味を
帯びています。ことし
3月29
日に
迫った
離脱に
向け、イギリス
議会は、メイ
首相が
EUと
合意した
協定案について
日本時間の16
日朝早く
採決を
行い、
賛成202、
反対432の
歴史的な
大差で
否決しました。
これを受けて最大野党 労働党は内閣不信任決議案を提出しましたが、地元メディアは可決される可能性は低いと伝えています。
メイ首相は、議会に対し今月21日までに代替案を示すとしており、今後、与野党から直接意見を聞いたうえで、EUと改めて協議する方針を明らかにしました。
ただEUは、議会での採決を前にメイ首相に宛てた書簡の中で、協定案の修正には応じられないとする従来の立場を強調しています。
事態打開の道筋は見えておらず、EUとの取り決めがないまま離脱する「合意なき離脱」が次第に現実味を帯びています。
さらに議会では、離脱をこのまま進めるのかどうか国民投票で決めるべきだと訴える残留派もここにきて一段と抵抗を強め、先行きは一層不透明になっています。
「合意なき離脱」とは
イギリスはことし3月29日の離脱の条件を定めた協定案をEUと合意しています。
協定案には、離脱したあとの急激な変化を避けるため来年末まで移行期間を設けることが盛り込まれ、この間、イギリスはEUの単一市場と関税同盟に残り、事実上EUにとどまります。
イギリスはこの移行期間中にEUと話し合い、これまでかからなかった関税をどうするかや、食品の安全基準など、幅広い分野で共有していたルールの扱いなどを決めて、EUとの間で貿易協定など新たな関係を作りたい考えです。
協定案はイギリス議会とEU議会に承認されることが必要で、承認を得られないと移行期間は白紙になるため、イギリスは3月29日にEUと取り決めがないまま離脱します。
この状態が「合意なき離脱」です。
「合意なき離脱」ではEUとの貿易に関税が復活するほか、国境を通過するモノに対して通関の手続きが必要になります。
イギリスに工場を置く自動車メーカーはEUからの部品の調達が滞ることに懸念を強め、ホンダやドイツのBMWは先行きが予測できないとして離脱直後は工場の操業を一時停止することを決め、生産現場の混乱を避けようとしています。
またイギリス政府は物流が滞る事態に備え、医薬品の備蓄を6週間分積み増すよう医薬品メーカーに呼びかけているほか、フランスからの積み荷が届くイギリス南東部で激しい渋滞の発生を想定した訓練も行っています。
イギリスにとってEUとの貿易は輸出入のおよそ半分を占めるだけに、イギリス経済に与える打撃は大きく、中央銀行のイングランド銀行は最悪の場合、ことしのGDP=国内総生産の伸び率が当初の予想より8ポイント縮小し、通貨ポンドが大幅に値下がりするおそれがあると警告しています。
また、EUと共有していたルールが突然失効することで暮らしへも影響が出ると予想され、イギリス政府は、
▽イギリスの運転免許証だけではEU域内で運転ができなくなること、
▽イギリスで契約した携帯電話をEUで使うと一部の通信会社からは新たに国際料金などが課せられる可能性があること、などを例に挙げて注意を呼びかけています。
ただ「合意なき離脱」による損失は一時的なものだと主張する人たちもいます。
EUとの決別を訴える離脱強硬派は、3月の離脱直後からEUのルールに縛られずイギリスの判断で世界の各国と貿易ができるようになるため、長期的に考えればイギリスの成長につながるとしています。
経済同友会 小林代表幹事「不測の事態に備えを」
イギリス議会がEUからの離脱の条件を定めた離脱協定案を否決したことについて、経済同友会の小林代表幹事は「『合意なき離脱』の可能性が高まったことを憂慮し、イギリス経済の停滞や日本企業への影響を懸念している。日本企業としては今後の動向を注視しながら不測の事態に備えた計画が求められる」というコメントを出しました。