沖縄おきなわ戦せん 「護まもる郷さと隊たい」の陣地じんち跡あと見みつかる 少年しょうねんらで編成へんせいの極秘ごくひ部隊ぶたい

75年ねん前まえの沖縄おきなわ戦せんの際さい、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんは、正規せいき軍ぐんを後方こうほう支援しえんし、持久じきゅう戦せんに持ち込もちこむため、およそ1000人にんの地元じもとの10代だいの少年しょうねんらを召集しょうしゅうして「護まもる郷さと隊たい」と呼よばれるゲリラ部隊ぶたいを極秘ごくひに編成へんせいしました。

護まもる郷さと隊たいは昭和しょうわ20年ねん4月つきにアメリカ軍ぐんが沖縄おきなわ本島ほんとうに上陸じょうりくすると、3か月かげつにわたって山岳さんがく地帯ちたいでゲリラ戦せんを展開てんかいしましたが、激はげしい攻撃こうげきにさらされるなどして160人にんが命いのちを落おとしました。

この護まもる郷さと隊たいが拠点きょてんを置おいた陣地じんち跡あとが、沖縄おきなわのアメリカ軍ぐん基地きち「キャンプ・ハンセン」内ないで見みつかっていたことがアメリカ軍ぐんへの取材しゅざいでわかりました。アメリカ軍ぐんが、ことし3月つきに基地きち内ないに残のこる戦争せんそう遺跡いせきの調査ちょうさを行おこなっていた際さいに、沖縄おきなわ本島ほんとう北部ほくぶにある恩納おんな岳たけし（おんなだけ）の山頂さんちょう付近ふきんで見みつけたということです。

恩納おんな岳たけしには、沖縄おきなわ戦せん当時とうじ、護まもる郷さと隊たいが司令しれい部ぶや野戦やせん病院びょういん、それに敵てきを迎え撃むかえうつ機関きかん銃じゅう壕ごうなどからなる陣地じんちを構築こうちくし、今回こんかい、機関きかん銃じゅう壕ごうの跡あとや部隊ぶたいの建物たてものの土台どだい部分ぶぶんとみられる石垣いしがきなどが確認かくにんされました。

護まもる郷さと隊たいについて調査ちょうさしている地元じもとの専門せんもん家かによりますと護まもる郷さと隊たいの戦争せんそう遺跡いせきが見みつかったのは、今回こんかいが初はじめてです。

一方いっぽう、恩納おんな岳たけしの一帯いったいは戦後せんご、アメリカ軍ぐんが実弾じつだん射撃しゃげき訓練くんれんなどを行おこなう演習えんしゅう場じょうとして使用しようしているため、少年しょうねんたちを巻き込まきこんだ悲惨ひさんな戦闘せんとうの実態じったいについて現場げんばでの詳くわしい検証けんしょうができないままになっているということです。このため専門せんもん家かは、今後こんご、アメリカ軍ぐんに対にたいして共同きょうどう調査ちょうさを申し入もうしいれることにしています。

「護まもる郷さと隊たい」ほとんどが10代だいの少年しょうねん

旧きゅう日本にっぽん軍ぐんが作成さくせいした資料しりょうなどによりますと、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんは劣勢れっせいが想定そうていされた沖縄おきなわ戦せんを前まえに秘密ひみつ戦せん要員よういんの養成ようせい機関きかん「陸軍りくぐん中野なかの学校がっこう」の出身しゅっしん者しゃを派遣はけんし、正規せいき軍ぐんを支援しえんする遊撃ゆうげき戦せん＝ゲリラ戦せん専門せんもんの部隊ぶたいを沖縄おきなわ本島ほんとう北部ほくぶで極秘ごくひに編成へんせいしました。

当時とうじ、アメリカ軍ぐんは日本にっぽんの本土ほんどを攻撃こうげきする前線ぜんせん基地きちを設置せっちするためにまず沖縄おきなわ本島ほんとう中部ちゅうぶに上陸じょうりくして近ちかくの飛行場ひこうじょうを奪うばい、その後そのご、正規せいき軍ぐんが拠点きょてんを置おく南部なんぶに攻め込せめこんでくるとみられていました。

このため、北部ほくぶの山岳さんがく地帯ちたいにゲリラ部隊ぶたいを配置はいちし、上陸じょうりくした敵てきを後方こうほうから攻撃こうげきしてかく乱かくらんする作戦さくせんを立たてたということです。編成へんせいされた部隊ぶたいは、およそ1000人にんの隊員たいいんのほとんどを地元じもとの10代だいの少年しょうねんが占しめ、「故郷こきょうをみずからの手てで護まもる」という意識いしきを持もたせるため、「護まもる郷さと隊たい」と名付なづけられました。

「護まもる郷さと隊たい」は2つの部隊ぶたいからなり、「第だい一いち護まもる郷さと隊たい」は現在げんざいの名護なご市しにある多野たの岳だけに、「第だい二に護まもる郷さと隊たい」は恩納おんな岳たけしに陣地じんちを築きずき、アメリカ軍ぐんが沖縄おきなわ本島ほんとうに上陸じょうりくした直後ちょくごから3か月かげつにわたってゲリラ戦せんを展開てんかいしました。

また、少年しょうねん兵へいらは、見た目みためが幼おさなかったことから、避難ひなん民みんに成り済なりすます方法ほうほうで敵てきの偵察ていさつや正規せいき軍ぐんとの伝令でんれいにも駆り出かりだされたということです。

護まもる郷さと隊たいについて調査ちょうさしている地元じもとの専門せんもん家かによりますと、戦闘せんとうなどで隊員たいいん160人にんが命いのちを落おとしました。

一方いっぽう、秘密ひみつ部隊ぶたいだったため沖縄おきなわでも戦後せんご長ながく存在そんざいをほとんど知しられず、部隊ぶたいや戦闘せんとうの実態じったいについて解明かいめいされていないことも多おおいということです。

「護まもる郷さと隊たい」と「恩納おんな岳たけし」

恩納おんな岳たけしは沖縄おきなわ県けん恩納おんな村むらと金武かなたけ町まちの境さかいにある標高ひょうこう363メートルの山やまで、沖縄おきなわ戦せんの際さい、「第だい二に護まもる郷さと隊たい」が陣地じんちを構かまえました。元もと少年しょうねん兵へいの証言しょうげんなどによりますと、山頂さんちょう付近ふきんに部隊ぶたいの司令しれい部ぶや機関きかん銃じゅう壕ごうなどがあり、中腹ちゅうふくには野戦やせん病院びょういんや兵舎へいしゃなどがありました。

しかし、アメリカ軍ぐんに攻め込せめこまれると、部隊ぶたいは山頂さんちょうへと追い詰おいつめられていき、それに伴ともなって山頂さんちょう近ちかくに移うつされた野戦やせん病院びょういんは、負傷ふしょうした少年しょうねん兵へいなどであふれかえったということです。

そして、部隊ぶたいは数すう千せん人にん規模きぼによる攻撃こうげきを受うけ、昭和しょうわ20年ねん6月つき初はじめに陣地じんちを撤退てったいし、恩納おんな岳たけしはアメリカ軍ぐんに制圧せいあつされました。

部隊ぶたいが撤退てったいする際さい、負傷ふしょうして動うごけなかった少年しょうねん兵へいらは軍医ぐんいに殺害さつがいされたり、手りゅう弾しゅりゅうだんを渡わたされてみずから命いのちを絶たったりしたということです。

戦後せんご、アメリカ軍ぐんは昭和しょうわ22年ねんから恩納おんな岳たけしを含ふくめた一帯いったいを実弾じつだん射撃しゃげき訓練くんれんを行おこなう演習えんしゅう場じょうとし、さらに、昭和しょうわ25年ねんに朝鮮ちょうせん戦争せんそうが勃発ぼっぱつすると、艦かん砲ほう射撃しゃげきや空爆くうばくなどを伴ともなった演習えんしゅうも行おこなうようになりました。

その後そのご、一帯いったいは昭和しょうわ32年ねんからアメリカ軍ぐん基地きち「キャンプ・ハンセン」として運用うんようされ、現在げんざいに至いたるまで軍ぐんの特別とくべつな許可きょかがなければ立ち入たちいることができない状態じょうたいが続つづいています。

米べい軍ぐん撮影さつえい 170枚まいの写真しゃしん

ＮＨＫえぬえいちけいは今回こんかい、アメリカ軍ぐんが恩納おんな岳たけしの護まもる郷さと隊たいの陣地じんち跡あとで撮影さつえいしたおよそ170枚まいの写真しゃしんを軍ぐんから入手にゅうしゅしました。

このうちの1枚まいには、沖縄おきなわ戦せんの際さいに護まもる郷さと隊たいが使つかった機関きかん銃じゅう壕ごうの跡あとが土砂どしゃで一部いちぶが埋うまった形かたちで写うつされています。

護まもる郷さと隊たいの元もと少年しょうねん兵へいによりますと機関きかん銃じゅう壕ごうは沖縄おきなわ戦せんの直前ちょくぜんに少年しょうねん兵へいらによって山やまの斜面しゃめんに横穴よこあなを掘ほって作つくられ、入り口いりくち近ちかくには土どのうなどが積つまれていました。そして、壕ごう内ないには機関きかん銃じゅうや弾薬だんやくなどが備そなえられ、アメリカ軍ぐんが攻め込せめこんでくると少年しょうねん兵へいらは中なかで身みを隠かくしながら機関きかん銃じゅうを掃射そうしゃして迎え撃むかえうったということです。

また、別べつの1枚まいでは石垣いしがきが確認かくにんでき、護まもる郷さと隊たいについて調査ちょうさしている専門せんもん家かによりますと特徴とくちょうから司令しれい部ぶか物資ぶっしの保管ほかん小屋こやなど部隊ぶたいの建物たてものの土台どだい部分ぶぶんとみられるということです。

このほか、近隣きんりんなどから陣地じんちに避難ひなんしてきた住民じゅうみんが使つかっていたとみられる茶ちゃわんや湯飲ゆのみの破片はへんなども確認かくにんできます。

長年ながねん、護まもる郷さと隊たいについて調査ちょうさしている恩納おんな村むら「村むら史し編へんさん係がかり」の瀬戸せと隆博たかひろさんは「元もと少年しょうねん兵へいらの証言しょうげんを裏付うらづけるものだ。恩納おんな岳たけしはアメリカ軍ぐん基地きち内ないにあるため立ち入たちいりができず、場所ばしょははっきりしないものの遺骨いこつも残のこっているという元もと少年しょうねん兵へいの証言しょうげんもあるため、基地きち内ないに入はいってさらに詳くわしく調査ちょうさする必要ひつようがある」と話はなしています。

「根ねこそぎ動員どういん」の始はじまり

太平洋たいへいよう戦争せんそうで旧きゅう日本にっぽん軍ぐんは、敗戦はいせんが続つづき戦局せんきょくが悪化あっかすると一部いちぶで戦果せんかがあがっていたゲリラ戦せんを拡大かくだいすることを決きめ、陸軍りくぐん中野なかの学校がっこう出身しゅっしん者しゃの指揮しきのもと最初さいしょの専門せんもん部隊ぶたいを編成へんせいして昭和しょうわ19年ねん3月つきにニューギニア島とうに派遣はけんし、その後そのご、第だい2部隊ぶたいをインドネシア東部とうぶの島しまで組織そしきしました。

そして、「絶対ぜったい国防こくぼう圏けん」の要所ようしょのサイパンが陥落かんらくした翌月よくげつの昭和しょうわ19年ねん8月つき、3番目ばんめと4番目ばんめとなる部隊ぶたいを沖縄おきなわに編成へんせいすることを決きめます。これが「第だい一いち護まもる郷さと隊たい」と「第だい二に護まもる郷さと隊たい」です。

それまでは成人せいじんの兵士へいしを中心ちゅうしんに編成へんせいしたのに対にたいし、護まもる郷さと隊たいは兵士へいし不足ふそくのため地元じもとの10代だいの少年しょうねんたちを召集しょうしゅうすることになりました。その際さい、当時とうじは19歳さいからだった召集しょうしゅう対象たいしょうの年齢ねんれいを昭和しょうわ19年ねん11月つきに軍ぐんの規則きそくを変更へんこうして17歳さいに引き下ひきさげ、さらに翌月よくげつには、沖縄おきなわなどでは志願しがんすれば14歳さい以上いじょうの少年しょうねんも召集しょうしゅうできるようにしました。

しかし、元もと少年しょうねん兵へいらの証言しょうげんによりますと当時とうじ、志願しがんしたとされた少年しょうねんたちの中なかには強制きょうせい的てきに召集しょうしゅうされたケースが少すくなくなかったということです。

護まもる郷さと隊たい以降いこう、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんは子こどもたちも戦場せんじょうに投入とうにゅうする「根ねこそぎ動員どういん」の動うごきを加速かそくさせ、陸軍りくぐん中野なかの学校がっこうの出身しゅっしん者しゃを全国ぜんこくに派遣はけんして各地かくちの少年しょうねんや少女しょうじょなどにゲリラ戦せんの訓練くんれんなどを施ほどこし、本土ほんど決戦けっせんに備そなえました。

そして、沖縄おきなわで旧きゅう日本にっぽん軍ぐんによる組織そしき的てきな戦闘せんとうが終結しゅうけつしたとされる昭和しょうわ20年ねん6月つき23日にちに「義勇ぎゆう兵役へいえき法ほう」が施行しこうされ、全国ぜんこくの15歳さい以上いじょうの男子だんしと17歳さい以上いじょうの女子じょしが召集しょうしゅうの対象たいしょうとなりました。

護まもる郷さと隊たいについて調査ちょうさしている恩納おんな村むら「村むら史し編へんさん係がかり」の瀬戸せと隆博たかひろさんは「護まもる郷さと隊たいの戦争せんそうが沖縄おきなわだけのものでなく、さらにバージョンアップして本土ほんど決戦けっせんで行おこなわれた可能かのう性せいがあった。日本にっぽんでは世界せかい各地かくちで起おきているテロなど遠とおいものとして実感じっかんがあまりないと思おもうが、かつて日本にっぽんで10代だいの子こどもを戦場せんじょうに送り出おくりだし、命いのちを落おとすことを推奨すいしょうして犠牲ぎせいにしており、決けっしてひと事ひとごとではない」と話はなしています。

元もと少年しょうねん兵へい「戦場せんじょうという地獄じごく 仲間なかまが次々つぎつぎに」

沖縄おきなわ県けん大宜味おおぎみ村むらに住すむ瑞みず慶山けいざん良光よしみつさん（91）は16歳さいだった昭和しょうわ20年ねん3月つきに召集しょうしゅうされ、「第だい二に護まもる郷さと隊たい」に配属はいぞくされました。

そして、ゲリラ戦せんの際さいにアメリカ軍ぐんの手りゅう弾しゅりゅうだんで大だいけがをし、その後そのごは、部隊ぶたいの後方こうほう支援しえんとして恩納おんな岳たけしの陣地じんちの野戦やせん病院びょういんで負傷ふしょう兵へいの搬送はんそうや死亡しぼうした兵士へいしの埋葬まいそうなどに当あたりました。

瑞みず慶山けいざんさんによりますと、野戦やせん病院びょういんではベッドの代かわりに板いたが敷しかれ、収容しゅうようされた負傷ふしょう兵へいが手当てあてを受うけていたということです。そして、アメリカ軍ぐんが攻め込せめこんでくると負傷ふしょうして動うごけなくなった兵士へいしの中なかには捕虜ほりょになって情報じょうほうが漏もれるのを避さけるため、軍医ぐんいによって銃殺じゅうさつされた人ひともいたということです。そのうえで、部隊ぶたいが陣地じんちを撤退てったいする際さい、残のこった負傷ふしょう兵へいらは手りゅう弾しゅりゅうだんを手渡てわたされみずから命いのちを絶たったということです。

瑞みず慶山けいざんさんは「上陸じょうりくしたアメリカ軍ぐんと戦たたかえということになり、僕ぼくたち少年しょうねんが最初さいしょの戦たたかいを担にないました。いつ殺ころされるのかという恐怖きょうふ心しんの中なか、仲間なかまが次々つぎつぎと『アンマー』と叫さけびながら死しんでいった。戦場せんじょうという地獄じごくに行いき、戦後せんごはＰＴＳＤになったうえに護まもる郷さと隊たいは正規せいき軍ぐんではないとして補償ほしょうも受うけられないなど苦くるしい日々ひびを過すごしました」と話はなしていました。